2023年12月の出来事


写真:18日に岩井の海岸に打ちあがったザトウクジラのメス(撮影日は19日)

以下は今月のX(旧Twitter)投稿より引用し追記します.
投稿日が投稿内容の観察日ではない場合もあります.

2日
久しぶりに引っ張り出した本。
「ストランディングフィールドガイド―海の哺乳類」
ストランディング対応についての本があるのです。
1996年に国立科学博物館の山田 格先生らが翻訳されたもの。
結構絵での解説が多くて、その絵のタッチも楽しい感じで好きです。
海棲哺乳類好きの方、サーファー、カヤッカー、ビーチコーマーにも是非読んで頂きたい!
追記:廃版なので古本を。と思って見たら高くなってました...
元々7000円の高めの本ですが。

4日
風が止んだ隙にポッドキャストを録音してきました.
早速アップしたのですが作業中に9月分を飛ばしていた事に気づきました...
そちらはまた...
もしヒマでしょうがないという時に,眠れない時に(すぐ眠くなります??)お聴きいただければ幸いです.

写真:独特なザトウクジラの胸びれ.
オニフジツボというザトウクジラにしか付着しないフジツボが先端にあります.
そして平面にはありませんが,代わりに丸い模様が.

4日
今日の風紋はとてもきれいでした.
風が強かった証拠です.
海の(水の)波と形成要因は風の摩擦ですから一緒ですが,水に比べ砂は形成にも崩壊にも時間がかかるので人の目が認識しやすいですね.
水の波は瞬間的に形を変えてしまうので観察で理解するのが難しいですけれど,砂はじっくりと波を観察できるので,水に置き換えて観察してみると水の方の波を理解しやすくなる教材になると言えそうです.
シーカヤッカーもサーファーも,さらには海水浴を楽しむ人も,波を理解するのは自分の命を護るために大切です.
カラスとハクセキレイの足跡と,その写真を撮っていた人間の足跡の対比も面白かったです.
野生の生き物たちの真っすぐな生き方と生涯彷徨いながら生きる人間との違いといった感じ?(彷徨ってるのは私だけかもですが...)

5日
たてやまビーチクリーンボランティアネットワーク主催「きれいな海の絵と写真コンテスト」表彰式で行った講演スライド画面を動画化しYouTubeで公開しました.
今回参加できなかった方に画像だけでも見て頂けたらという事と講演依頼頂く場合のご参考にという感じです.
口頭での説明など音声は入れていませんが,簡単な説明は画面に書いてあります.
講演のご依頼いただいた時には参加者や講演の目的に応じていつもスライドを新しく作っていますが,このままの内容で良ければ南房総での講演はすぐにできますので,もしご希望あれば詳細お問い合わせください.


12日
11月5日に館山湾の海上で観察したカツオノカンムリの動画をYouTubeにアップしました.
漂着ではよく見る生物ですが,生態を観察する機会が滅多にありませんので,ご参考に.

12日
11月3日に見かけた種類が不明でとりあえず撮っておいた鳥,ツミのようでした.
普通に見られる種だそうですが,南房総の海辺しか見ていない私は初確認であります.
南房総にどれくらいの密度でいるのだろう?

13日
海浜植物の記録に行ったのですが,ついでにポッドキャスト用の波音も録ってきました.
とってもいい感じの波でした(音が).
6分半くらいです.
是非聴いてみてください.


写真:これが「本当のクジラ髭」なザトウクジラの顎の先に生えている小さな洞毛.
ストランディングは生態では観察できないこういった小さなものを見ることが出来る貴重な機会です.

16日
第34回日本ウミガメ会議でのポスター発表「アカウミガメ産卵北限域における砂浜環境の特性」溝呂木舞波(筑波大学)他で著者に加えて頂きました.
筑波大により根本海岸でこの夏に設置した地中温度計データと周辺海岸での産卵記録を用いています.
温暖化が進むことで北限域(千葉県以北)の繁殖地が重要になっていく可能性と海面上昇による海岸線の変動により砂浜の奥行きの確保の必要と既設構造物の影響に触れた内容です.
これから先の未来のことに気持ちを寄せている内容で視点が素晴らしいので皆さんにも見て頂けたら良いなあと思う内容です.
著者:溝呂木舞波(筑波大学),渡部明美(一宮ウミガメを見守る会),猿田勇(九十九里浜の自然を守る会),大木清(千葉県自然保護指導員),藤田健一郎(6DORSALS KAYAK SERVICES),岩瀬環樹(御宿うみがめパトロール隊),岩瀬レン有世(御宿うみがめパトロール隊),三次恵美子(御宿うみがめパトロール隊),平治隆(アクアマリンふくしま),吉村智範(鴨川シーワールド),吉田正人(筑波大学),佐伯いく代(筑波大学).

16日
いつだかの館山湾.
ブログ用に加工してましたが,青がきれいに出たので掲載.
カメラの撮った青を本当の青に戻すのがいつも難しいです.
> 晴れた海の上は青だらけなので,青好きには最高の空間です.

18日
先日,9月のカヤック日記をすっ飛ばして10月のをアップしてしまいましたが,本日9月分アップしました.
聴くのは大変なので...お聴きにならなくても良いので,いいねをよろしくお願いします!
今回は短くて36分ほどですが.(十分長い)


写真:ザトウクジラの尾ビレのギザギザ.
巨大なピアスでも付けてたのかな?という穴の成因は???

20日
昨日の地味な写真.
アミが沢山打ちあがっている中に1㎝くらいのカニの甲が沢山いくつかあって,見た記憶が無くて気になったり.
シロチドリが忙しそうに,いかにも動く小さな生き物を採餌していた場所で,何を食べてたんだろう?と探してやっと見つけた活発に動く生き物は小さなユスリカ.
「沢山いくつか」は書き間違えです!
「沢山」は言い過ぎだなと思って「いくつか」に書き換えたつもりでした。(っていういらない説明)

20日
山奥はよく使われる言葉ですが、海奥は聞いたことが無いので、これから使ってみようかと思います。
そもそも海奥はどういう場所なのかの定義づけが必要ですが、海でほとんど行き止まりになっているような南房総のような場所としたら良さそう。
海奥の暮らしは最高!(使ってみました)
皆さんも是非。

24日
観光目的で昔に作られた館山市太平洋岸に接する道が近年しょっちゅう砂に埋もれ頻繁に通行止めとなっています.
砂丘に長年かかって植物が伸ばした茎を根こそぎにした場所で起きている事で道路の問題だけではなく大元は海岸環境の問題なので,かなり気になっています.
写真は2017年の植生があった頃.
マップ上の矢印と番号は写真の順に撮影位置と撮影方向です.
そしてGooleMap衛星写真は現在の状況.
ここだけ砂丘の植生が完全に排除されています.
ストリートビューは道路側の様子.
歩道が砂で埋もれていますが,通行止めの時には車道もこうなるのです.
道路上に積もった砂は税金を使って幾度も幾度も排除している状況です.
砂を保っていたのは主にハマゴウという丈夫な地下茎を伸ばす海浜植物でした.
人間が造ったものを支えていたのは健気な海岸の植物たちだったという事が明確になりました.
海浜植生を維持する事の意味を知ってほしいと思います.
ちなみに2017年の写真は非常に漂着ゴミが多いうえ,砂丘植生上に漂着しているという状況ですが,同年21号台風(静岡県に上陸,非常な高潮を南房総にもたらした)による砂丘前面崩壊の状況を記録した写真です. この時も植生が砂丘が崩れるのを防いでくれました.


写真:きれいな波の砕ける海上で魚を探すミサゴ(左上).
今シーズンは個体識別調査の方はお休みで,遭遇した時のみ記録しています.

26日
18日に岩井に打ちあがったザトウクジラのメスは本日26日海岸に埋葬されました.
日本鯨類研究所による調査が25日からこの日にかけて行われたとの事でした.
顎のイボの先端辺りには小さな髭が生えています.
猫や犬などに生えている洞毛!あれです!
ストランディングの時にじっくり見られる機会があれば探してみてください.
鯨類の無毛なイメージがちょっと変わる感じがするかもしれません.
自分も初めて教えてもらった時にそんな感じがしました.
当方ホームページの ストランディングのページ
ストランディングに関する事書いてありますので,是非ご参考にしてください.

29日
次号kayak誌はザトウクジラについて書いてみることにしました。(このページが公開された時点で既に発刊されていますが)
それで昔に父島で買った「小笠原ホエールウォッチングガイド」を引っ張り出して見てました。
あれから30年経ってザトウクジラの方で自分の住んでいる海に来てくれるようになったのは良いんですが死んでるのばかりなので、そろそろ元気なのとカヤックで南房総の海で遭遇する機会が欲しいところです。


写真:海岸にある鳥の足跡はかなりの情報源となります.

31日
大晦日ですがKAYAK誌のザトウクジラの原稿書いてました.
千葉県のザトウクジラ漂着,混獲の記録を国立科学博物館のサイトから引っ張り出したのでご参考に貼っておきます.
うち混獲(入網→死)は9件,あとは海岸漂着.
これは上記の「死んでるのばかりなので」に関わって来ることですが,異常と思いませんか?
これで良いのだろうか?と誰も思わないのは知られていないからです.
国立科博の動物研究部が一生懸命ストランディングを調べているのもクジラたちの死が人の生活の影響を受けているのではないか?というところがあるようです.
網に入って死んでしまうクジラがこんなにもいること,しかも身近な東京湾の中で.
元気で巨大でカッコイイザトウクジラに小笠原や沖縄,ハワイ,アラスカなどなど,そういう自然豊かな海でホエールウォッチングなどでザトウクジラと逢って来た人が日本でも随分増えました.
延べ人数にしたらどれくらいいるのでしょう?
それらの人が暮らすすぐそばの海で,昔に自分が逢いに行った場所に向かう途中のザトウクジラが死んでいる事実があって,それとこれとが結びついていないのかもしれないよ感じています.
今回,南房総の海岸で打ちあがったザトウクジラも誰からがどこかで出逢ったあの元気なザトウクジラの赤ちゃんだったかもしれません.
最近は三宅島でもザトウクジラが普通に観察されるようになりました.
次は南房総でしょう.
その時までにこの問題を解決に進めていかないと,東京湾で凄い数のザトウクジラが網にかかって死んでいるという事実は世界中で問題視される可能性がありますし,今後来遊数が増えれば混獲の頻度は高まるはずで,漁業者にとっても負担が増す事になります.
どうにか網のデザインに工夫を凝らして,根本的にクジラが混獲されない仕組みが構築されることを願っています.
今回のkayak誌で書いたザトウクジラ編でもそれらについて触れましたので,是非お読み頂ければ幸いです.
このページの最後にamazonへのリンクがあります.


写真:きれいなヒメルリガイが漂着していました.
12月に漂着する印象は無いんですが,どうなんでしょう?

千葉県のザトウクジラ漂着,混獲
※最後のメートルは体長です.
1 1996.01.06 館山市波佐間漁港沖約800m 混獲
2 1999.03.07 鴨川市江見内遠野江見海水浴場 7.5 m
3 2000.02.01 安房郡富山町小浦漁港沖約1500m 混獲 5.5 m
4 2002.04.19 安房郡千倉町 混獲 6.9 m
5 2005.01.02 安房郡千倉町千田、道の駅ちくら潮風王国地先 8.4 m
6 2005.12.12 鴨川市 混獲
7 2006.01.22 安房郡鋸南町保田地先 7.2 m
8 2009.12.19 南房総市小浦地先 混獲 9 m
9 2010.01.20  館山市富士見沖ノ島公園 9.61 m
10 2010.03.08 安房郡鋸南町勝山港沖 8.8 m
11 2011.08.17 鴨川市磯村地先 混獲 9.1 m
12 2012.04.06 館山市洲崎仙道地先 混獲 8.43 m
13 2012.05.07 館山市伊戸 7.3 m
14 2013.03.07 南房総市富浦町南無谷 7.8 m
15 2014.01.13 富津市金谷沖 混獲 8.7 m
16 2014.04.21 安房郡鋸南町勝山港沖 7.7 m
17 2016.01.04 館山市波左間 8.2 m
18 2016.01.12 南房総市千倉町川口
19 2018.06.18 浦安市港地先(東京湾)
20 2018.12.03 館山市波佐間沖(東京湾/相模湾) 混獲
21 2020.02.02 南房総市千倉町平舘 約 8.64 m
22 2020.07.30 南房総市千倉町瀬戸浜
23 2020.09.07 南房総市和田町下三原 約 6 m
24 2023.03.05 勝浦市吉尾地先 吉尾漁港区域 9.6 m
25 2023.11.07 勝浦市鵜原地先 毛戸浦 約 9.16 m
それではどうぞ良い年をお迎えください.
ザトウクジラにとっても良い年になりますように.

追記:こんな記事 があったのでご紹介.
館山で打ちあがったザトウクジラが沖縄に展示されているという不思議な経緯です.
この時の作業もお手伝いさせていただきました.
懐かしいです.
当時の掘り出しのことが書いてあるうちの ブログ
漂着し埋めた時のことが書いてある ブログ
この間に東日本大震災があって,南房総にも低いながら津波が来たり砂浜で液状化があったりしたので,よくちゃんと掘り出せたものだなあと今になって思います.
...とかやってる間に年が明けそうな感じでした.

Twitterの引用は以上です.

今回は更新が大変遅くなり,もう2024年の2月5日となってしまいました.
実は昨年2023年7月の日記がまだ更新できていません.
そちらを完成する為に,こちらの作業を延期していました.
実は2023年7月の日記は先日書き終えたのですが,非常に内容が膨大で,実際にブログとして公開するにはあまりに長くなってしまった事,さらに文中にお名前が出ている方や,それら関係の方々にあらかじめの確認を取るなどの必要も生じ,実際のところ公開が難しくなっています.
しかし,一方では海岸を管理委託されている区の方々と話をする機会なども得ることが出来,少しずつではありますがシロチドリ,コチドリとウミガメの繁殖に関して前向きな対応が得られる可能性が見えてきました.
とはいえまだまだ実際の道程はかなり長い事が分ってきていますので,やっと出発したところといえますが,ここは大事なところですので公開も少し慎重に進めるつもりです.
このような問題があった場所で,これほど短時間にここまで保護が進んだという事例にしたいと思っていますので,それが分かるようにするためにはいつかこの資料が役立つことと思います.
その時には是非じっくりと長文と共に様々な写真と記録をご覧いただきたいと思います.
どうぞよろしくお願いいたします.


写真:やけに暖かな12月に内房某所で見つかったハマナタメの発芽.
この芽は1月の6日に枯れかけた状態で再確認しますが,当時別個体と誤認していました.

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