2021年8月の出来事


写真:台風接近の日に雲を纏った富士山とサーファーたち。

今回も今月の主な出来事をフィールドノートから抜き出しながら書いてみます。(その日のTwitterや関連リンクも貼っておきます)

2日
ネコノシタにスナハマハエトリを発見。
花が咲いておりハエの類も見られたので採餌の為の滞在と考えられました。
夏の間、スナハマハエトリが何度まで行動可能なのかが分かればと思い携帯している温度計で計測したところ気温29℃。
しかし夏も半ばになって計測している人間の方が暑さに耐えきれず記録を大幅に省く事態に…。

2日
白浜で海浜植生混群内に新たにグンバイヒルガオ発見。
1×1mほどのサイズ。

6日
6/14発見の白浜のグンバイヒルガオはこれまで台風の高潮などの影響は無く無事に育っていましたが、8日に房総半島に接近予定の台風10号により被波すると思われるので現時点でのサイズ記録。
14×6mほど。
最も海側の弦先端は高潮線に1m弱まで接近。

写真:中央暗い部分は台風10号の雲。右下は伊豆大島。

6日
平砂浦でのウミガメ調査中、南方に台風の雲塊。
帰宅後に衛星画像で確認し、台風10号の雲と確認。
この時点での台風の位置は九州の南、北緯27.4東経133.0辺りと撮影位置から遥か1100㎞ほども離れていましたが衛星画像で確認してみると周辺に紛らわしい雲もなく間違いなく台風の姿でした。
台風の全体像がこれほどはっきり見えたのは初めてでした。
こういう姿を実際に見た後に2日後でしたが台風そのものの中に自分が入ってみると、おかしなもので「遥々良く来たね」という気分で、あまり嫌なものという感じがありませんでした。
姿を見たことで親しみを感じたのかもしれないなと自己分析してみたりしました。
しかし実際には茂原市や勝浦市など県内11市町に警戒レベル4相当の「県土砂災害警戒情報」が発表されたり土砂災害がありましたので、やはり恐ろしいですが普通はその姿が見えないことで台風など気象に対する想像力が湧きにくい事が自身の身を守る対応に結び付きにくいのかもしれないなという感じがしました。
今回、衛星からのつまりモニタ越しの画像ではなく生の台風の姿を事前に見られた事で現実味があり、落ち着いて待ち受ける気持ちが自然に沸いてきたという感じがしました。
ただ考えてみれば我々海に関わる者は先にうねりが到達するなどの先触れを普段からよく目にして判断している方だとは思いますが、それでもそのものの姿というのは何か違うものを感じるなという印象でした。

8日
台風10号接近により大雨。
ウミガメ調査今季2回目のお休み。

9日
台風10号による高潮被波で6/14発見の白浜グンバイヒルガオは半分が被波し、一部枯死。

9日
6/23白浜ウミガメが台風10号による高潮で被波。
流出は免れた様子。

9日
台風10号による高潮被波で7/24発見の白浜ハマナタマメ消失。

写真:写真:7月7日に発見し毎日通過しながら見て愛着の湧いていたハマナタマメの美しい株も台風9号の影響で枯死。上は9日撮影10号を免れた姿、下は11日撮影9号の波を受けた姿。

10日
九州、四国を通過して岡山県で温帯低気圧になった台風9号がその後も荒天を持続し、房総半島も進路の東側であった為に南の風をもろに受け、海がかなり荒れた事で海岸では10号以上の影響が出ました。
今季3日目の調査休み。

11日
10号で半分被波した6/14発見の白浜グンバイヒルガオは台風9号低気圧では全体で被波し、ほとんど砂で埋没も青い葉の一部は砂から出ている。
再起できる?

11日
台風9号低気圧による波で6/25発見の白浜ハマナタマメ消失。

11日
台風9号低気圧による波で7/7発見の白浜ハマナタマメ枯死。

11日
台風9号低気圧による波で7/8発見の白浜ハマナタマメ消失。

11日
台風9号低気圧による波で7/24発見の白浜ハマナタマメ消失。


写真:ハマナタマメで吸蜜するウラナミシジミ。蜜へのアクセスが難しそうですね。

14日
館山市浜田アオウミガメ死骸漂着。
甲長42㎝。

18日
東岸ハマナタマメ群にウラナミシジミ訪花吸蜜。風で飛ばされても繰り返し戻って来る。

21日
気温31℃でスナハマハエトリが活発に探餌。

23日
7/9発見の平砂浦ハマナタマメ消失確認。
台風の為と考えられる。

23日
グンバイヒルガオの花弁にスナハマハエトリ。
体に花粉が付着していてクモによる送粉について考えた。
花の上でハエを待つ機会の多いスナハマハエトリは海岸性植物の貴重な送粉者となっているのでは?

写真:グンバイヒルガオの鮮やかな花弁とスナハマハエトリ。上記Twitterに花粉の写った拡大写真あります。

27日
南房総市東岸でアカギカメムシの死骸漂着確認。
私は初めて遭遇したのですが、どこか見覚えがあり、調べると元々は南西諸島以南の分布だったものが最近になって北上していて北海道でも見つかったりしてる少し話題のカメムシでした。

27日
7/30グンバイヒルガオで開花確認。

27日
前回18日に続き、今回も東岸ハマナタマメ群にウラナミシジミ訪花吸蜜。
今回は3群それぞれに×1頭確認。

31日
南房総市白浜の潮間帯にオカヤドカリの幼体が×3も同じ場所に。
なぜ群れているのかがとても不思議であった。
Wikipediaに「メガロパ幼生は幼体への変態に先立ち適合する巻き貝の貝殻に潜りこんで上陸し、以後は陸上生活をする」と書いてあり、幼体になってまさに上陸したところ?と想像も集合は不可解。
メガロパの時に集合するのか?でもどうやって呼び合うのか?なんのために集まるのか?いろいろ不思議でした。

写真:小さなオカヤドカリたち。

31日
南房総市白浜でスナホリガニの死骸。

31日
27日に初めて遭遇したばかりのアカギカメムシの死骸に南房総市白浜で再び遭遇。
今回の個体は肩左右に突き出す鋭利な突起が無いタイプで色も薄い。

31日
台風10と9で波を被り縮小した6/14発見の白浜グンバイヒルガオは砂の中から青々と葉が顔を出し少しずつ弦も伸ばしはじめ、再起確実。

31日
同じく台風の影響を受けた6/23産卵のウミガメ巣は子ガメの孵化脱出は確認できていない。

31日
これまでに台風や人為の影響なく無事を確認は以下。
6/28発見の南房総市東岸のハマナタマメ×2。
7/14産卵のウミガメ巣。
7/30発見の南房総市東岸のハマナタマメ。
7/30発見の南房総市東岸のグンバイヒルガオ。
8/2発見の白浜グンバイヒルガオ。

写真:台風の影響を受ける前のX字に広がった白浜のグンバイヒルガオ。

今回、台風の影響を受けた館山市、南房総市白浜のハマナタマメは全滅したわけですが、毎年このように台風の影響で多くのハマナタマメが群落となることなく消えていっている様子が十分観察できました。
同じく漂着種子で分布を広げるグンバイヒルガオと同条件で対比できたのも良かったです。
漂着した種子が台風での高波の影響を受けずに夏の間に十分な高さまで弦を伸ばし、他の植生群の縁辺りに群落を形成するのがいかに難しいかがよく分かりました。
そもそも漂着して分布を広げるというのは矛盾があって、「波で運ばれ」ておきながら、「波で枯れる」ということへの工夫と運が良くなければなりません。(正に運ですね)
種子は少しでも早い時期に発芽して、台風のシーズンまでに台風波も届かない位置まで弦を伸ばし逃げ切れるかは大切で、その点グンバイヒルガオは成長が早く、しかも波を被っても枯れにくく、一方ハマナタマメは潮に弱い上に成長ものんびりでした。
また異常な高い波を伴った大型の台風は通常の台風などでは決して波が届かない位置に種子を置いて行ってくれるという植物にとっては大きな恩恵があることがわかります。
南房総市東岸で今年見つかった堤防の高い位置に発芽したハマナタマメなどは以前の異常な高さの波を伴った台風により種子がそこに置かれたと考えられます。
しかも、その際にはその種子が置かれていった場所の他の植生の多くは、その波により一掃されるので、その時に置かれた種子にはとても優位な条件が用意されていることになります。
しかし広く見ると、同じその波で同種の大きな群落なども一掃されている可能性が高く、種全体では得なのか損なのか分かりにくいですが、そういう状況でも子孫が繋がるために仕込まれた、なかんかシブトイ仕組みだなと感じます。

写真:19日、浮石がやや多めで小笠原、福徳岡ノ場での噴火を想う。


パタゴニア