2023年9月の出来事


写真:駐車スペースなどもない海岸に行く時には自転車が便利.
どこの海岸でもアクセスできます.
自動車に載せていけば調査には超高効率です.

9月に入ってやっとウミガメの毎日調査から解放されましたので,少し休みつつツアーもしつつ過ごしました.
やっとのんびりする時間ができましたが,夏の間にウミガメとチドリに掛かりっきりで観察に行けずにいた場所を見て歩くなどフィールドに出る機会はあまり減りません.
それにしても気温が高い日が多く,夏の異常な暑さが結局9月いっぱい続きましたので,その点ではなかなか休まりませんでした.
シーカヤックも夏よりもむしろ9月以降が本来お勧めなのですが,この9月に限っては夏と同じように暑すぎる状況が続きました.
最近,夏のツアーのスケジュールを午後にしたのは昼間の暑さのピークを避けて安全に楽しんで頂くためでしたが,この9月もそのスケジュールでやった方が良いのではないかと感じました.
ただ日没が早くなりますので18時終了だと遅すぎるのですが.
ちなみに午後にツアーを行う事で,毎朝のウミガメ産卵調査で慌てなくて済むという事もあり,両方の点で考えてこうなりました.
以前はツアーのある日にはかなり早い時間に産卵地の海岸に行って急いで海岸を調べていましたが,そんな感じでは何かと気づかずにすぎている事もありそうで,これではダメではないかな?といつも思っていたのでした.
ですので,今のやり方は長年かかって辿り着いたなかんか良い方法と感じています.


写真:以前よく参加してくださったお客様が18年ぶりに参加してくださいました!しかも高校生の息子さんと!
先月の19年ぶりのお客様ご参加の投稿を見てのご参加との事大変嬉しかったです!
懐かしいお客様のご参加お待ちしております!

本来,シーカヤックを漕ぐには関東以南の夏の海には暑すぎるのです.
というのも,シーカヤックは元々は北極圏でイヌイットやアリュートといった人々のハンティングに使われていたボートで,腰から下が完全に船体に包まれるデザインのお陰で寒い日にも冷えにくく,密閉された船内は体温により温度が高まり更に暖かくなります.
また上半身はパドリングの動作を続けると体温が高まりますから,そういった身体の仕組みを最大限に利用する事で低温下での水面での活動に優れた脚となっています.
カヤックの船体は足にとっての靴と同じです.
釣りの人や,南海のマングローブツアーなどで体験的に使われる上に乗るタイプのカヤック(シットオンカヤック)はシーカヤックが登山靴やスニーカーとすれば,ビーチサンダルのようなものです.
つまり夏にのんびり過ごしたり,少しの距離を歩く程度ならビーチサンダルは良い履物で,四季を通して快適に移動を楽しむならシーカヤックが良いといった感じです.
シーカヤックに近いものでサーフスキーや折り畳み式のカヤック,その他今では様々なタイプのカヤックがありますが,それらはランニングシューズ,トレイルランニングシューズ,ハイキングシューズ,登山靴と同じように目的別に細分化されています.
ただトレイルランニングシューズのような位置づけのカヤックを選んでおけば早く走る事ものんびり長距離を歩くことも楽しめますし,ランニングシューズで登山をしてはいけないわけではないので,使用者の好みという風にも言える事ですが,やはり自分がどういった海でどのような目的で移動を楽しみたいのかという,ある程度明瞭な目的やイメージなどがあった方がカヤックを購入して楽しむのであれば無駄なく済みます.
そして何よりそれぞれのフィールドに適した艇を使う事で安全性が確保しやすくなるのも確かです.


写真:一旦消滅した群落で発芽した小さなハマナタマメの株.

もちろんカヤックを始めてみないと,いろいろと分からない事もありますし,イメージしていたものと違う方向性の楽しみ方に後から興味が湧くという事も多々あるはずです.
そういった変化自体が趣味の面白さ,楽しみのひとつではありますが,カヤックという安くはないし,いくつもコレクションするには置き場所も困るようなものに関しては,無駄なく購入したいと思います.
ですから,その点でうちでは艇の購入はあまりお勧めしていません.
ツアーで幾度も幾度も漕いで,それでも飽きることなく続けていきたいと感じた時点で,その頃には自分がカヤックに求めるものがかなり明瞭になってきているはずです.
その頃になって初めてカタログと睨めっこを始めた方が多分生涯を共にすることが出来るような自分に合ったカヤックを見つけられると思います.
買ったのにあまり乗らずに放置されたカヤックや,ネット上で安く売られてしまっているまだ新しいカヤックやその他備品を見かけると,いつもそう思うのです.
資源の足りていないこの時代に無駄に購買することで,良い事は少ないですから,そういう点でも自分に必要なものがサンダルなのか登山靴なのか,実際にツアーで十分に体験して見極めてからがお勧めです.

ただやはり自分の,自分に合ったカヤックを手に入れて,それに乗り込んだ瞬間からの自身の変化はなかなか他では得られない感覚があると思います.
身近な個人的な乗り物として自転車や自動車があると思いますが,自転車はほとんどの日本人が子供の頃に乗り方を習得して,その経験をもとに一生使いますから,その流れが大人になってから習得するカヤックとは違ってきます.
自動車も免許を取るのは十代の終り頃という方が多かったと思いますが,これは原動機が付いている点でカヤックと違ったものとなっています.
更に近年の自動車は非常に運転が簡単で,昔の自動車と比べると操作する楽しみという点がほとんどなくなってしまい,単なる身体能力拡大増強マシンとなってしまっていますから尚更です.
体力も運動神経もほとんど必要なく,運転出来て当たり前で.その操作に関する面白味がほとんどなくなってしまいました. だから最近の人はむやみに速度を出すのだと思います.そのスピード感だけが唯一の非日常感覚なのでしょう.
非日常感覚という点で言えば海面を自力で沖合を往くという事ほど非日常的な事はありません.
沖を漕いでいて地上からオートバイの爆音が聞こえてくるときに私がよく考える事は,規制だらけの道路で暴走しているオートバイの若者よりもカヤックで沖の波の中を自由に移動しているカヤッカーほどのアウトローはいないんじゃないかという事です.
しかも誰にも迷惑を掛けずに.(事故さえ起こさなければ)


写真:この夏に非常に拡大したオカヒジキ群落は種子が熟成し,拡散する季節になりました.
どんどん拡大してほしいです.

話が逸れましたが,カヤックを大人になってから習得し,自分の身体の一部として移動を共にするようになった時の感覚は,海の上というそのフィールドの違いもあって,多くの人にとって全く新しい体験となるはずです.
つまり自転車のように子供の頃から慣れ親しんだものではなく,自動車のように操作が簡単で体力を使わなくても動くことが出来るような単なる身体能力拡大増強のマシンでもなく,最初は自身の身体機能を全て導入しても扱うのが難しいような,しかし太古の昔から人が行って来た「漕ぐ」という動作と,その船体が自身の身体と一体となっていく中に他の乗り物では得られない不思議な感覚を見出すことが出来ると思います.
一方,普及度合いの関係から欧米の人々にとってはカヤックの操作は子供の頃から馴染みがあり,パドルの扱い方を習う必要もないほど自然なものとして扱うという姿もあります.
ちょうどわれわれ日本人にとっての自転車のような感覚かもしれません.
日本でも最近,カヤックの需要はサーフボード状の板の上で片側だけに水かきのあるパドルを用いて立って漕ぐSUP(Stand Up Paddle board)に取って代わられている状況がありますが,私の想像ではこのKayak→SUPという流れがもう少し進んでいくと次にまた→Kayakという流れが生じると想像しています.
もしかすると既に起き始めている流れかもしれませんが,SUPを導入口として物足りなかったものをKayakに求める層が出てくると同時に,SUPを幼いころから親と親しんだ子供がある程度成長するとSUPではできない事をKayakに求め始める人がかなり出てくるのではないかという想像です.
KayakとSUPそれぞれに役割があり,それが成熟して日本のパドルスポーツの普及となり,欧米のように当たり前のものとしてそれぞれが存在していく時代が来ると思います.
その中には先に書いたような様々なタイプのマンパワーウォータークラフトが存在し,それぞれがどのカテゴリーなのかを区別するのも難しくなり,そもそも区別する必要さえなく存在し,それぞれが交わりあった状態で楽しまれている事でしょう.
私はそういう時代の日本の海の上を漕げるのが楽しみですので長生きして,いつまでもパドリングが出来る身体を維持したいと考えています.


写真:グンバイヒルガオで吸蜜中のイチモンジセセリ.
この秋はとても多く感じました.

以下は今月のTwitter(Xともいうらしいですね...)投稿より引用し追記します.
投稿日が投稿内容の観察日ではない場合もあります.

8日
夏の終わりのシロチドリ.
海岸のゴミにも,卵を産んだ砂浜を荒らしまわる重機にも文句を言うことなく耐え続けた夏ももう終わり.
ゆっくり休んでください.
8/29撮影.
当日の投稿

13日
8/3に撮ったチドリ.
現地ではっきりしなかったまま今日写真を整理していて出てきたので改めてよく見てみたのですが,オオメダイチドリ幼鳥でしょうか? 最後の写真はコチドリ(右)との対比.
なんであれきれいな鳥でした.
当日の投稿

16日
泳いでいる時のように水の中でもなく,しかし手を伸ばせば水に触れられるくらいという海面との距離感がシーカヤックを漕いでいる時の独特な視点と感覚を生み出します.
そして水面のすぐ上は空気よりも安定した水温の影響で暑い時には涼しく,寒い時には暖かい,そういう場所でもあったりします.
当日の投稿


写真:単独だったり他種と行動を共にしているミユビシギを見る事が多かったように感じます.
同種の数が減ってしまった場合に近い生態の種と行動を共にすることで安全を確保する場合が増えたのではないかと思いました.
この個体はトウネンと一緒でした.

19日
先日の19年ぶりのご参加のお客様の投稿を見て,2005年以来18年ぶりにご参加くださったK様!
しかも高校生の息子さんと!
これに引き続き懐かしいお客様のご参加お待ちしております!
それにしても10代の運動性能羨ましいですね.どんどん吸収してくれるので,どんどん詰め込んでしまいました!
これを機にいろいろな所でカヤックを漕いで世界を広めてほしいです.
当日の投稿

21日
時間が取りにくかった夏の間にご無沙汰だったエリアの馴染みの顔をチェックし始めています.
写真の地味~な草はハマナタマメという海浜性の植物.
種子が漂着して分布を広げます.
大切な継続観察対象です.
小さなうちに見つけて,少しずつ何年もかけて大きくなっていく姿を見続けていると愛着が湧いてきます.
来年は花を咲かせて見せてくれるかな?
当日の投稿

21日
8/15に平砂浦(館山市太平洋岸)でウミガメ調査中に発見のイルカの死骸です.
この日,現地確認したところ処理されていたので,情報公開しました.
2.6mのメスで歯の数や外形からミナミハンドウイルカかと思います.
発見してすぐに国立科学博物館の田島木綿子さんに連絡,クルマが入れない現場の状況と,科博側も他の出動で調査に来られない状況とで現地調査は諦め,歯と皮脂と筋肉のサンプル採取だけして発送しました.
暑くてあまり作業に集中できなかったのですが,科博の人たちは年中,日本中のあらゆる気候の中でこういうのを続けていて凄いなあと改めて感じました.
本当にご苦労様です.
ミナミハンドウイルカだとしたら御蔵島からの旅イルカなのか気になりますが,個体識別できそうな傷跡などは無く,背ビレも特徴無しでした.
当方の ストランディングのページをストランディング投稿の度に毎回リンクを一応貼っておくようにします.
ちょっと,いやかなり古いままのページですが基礎的な事は書いてあるので興味の湧いた方へ向けてです.
当日の投稿


写真:昨年はあれほど時間を割いたスナハマハエトリですが,今シーズンはほとんど観察をしませんでした.
それでも海浜植生などを見ているとヒョコっと登場してくれます.

27日
今漕がなかったらいつ漕ぐんだというくらいシーカヤックを漕ぐのに最適な季節ですので,久しぶりにひとりでのんびり漕いできました.
沖ノ島で増えてるというテーブル状サンゴはかなり沖にもありました.
丸いので水面からでも見つけやすい.
どんな海になっていくのでしょう...
「温暖化で爆発的増加?/エンタクミドリイシ(館山市沖ノ島)~房総の竜宮城~」 房日新聞 2023年05月31日 03時00分
当日の投稿

27日
ストランディング現場でお知り合いになった角 洋介監督作「寄り鯨の声を聴く」が,ちば外房映画祭2023 に入選とのこと! 角様おめでとうございます!!
ちば外房映画祭っていうのがあるんですね.
ストランディングに関した映画が千葉県で上映とは!見に行きたい...
そしてそのうち南房総でも上映してほしいです!
南房総は高頻度ストランディングエリアですから市民の方々へのストランディング調査周知も兼ねて.
科博の先生を呼んで,対談とセットで上映とか出来たらいいなあ.
角 洋介 / Yosuke Sumi@yosuke58fl 午後8:28 ・ 2023年9月25日
当日の投稿

29日
漂着物のたくさん残っている場所はミユビシギのレストラン.
ガツガツ食べてたのに,写真を撮っている私に警戒しはじめてしまって動きが止まってしまったところ.
顔を見合わせて「どうすんの飛んで逃げる?,ここでまだ餌食べる?」という表情で顔を見合わせてる感じ.
本当に迷惑だな自分と...お邪魔致しました.
当日の投稿


写真:シーカヤックでならあの向こうの岬まで海の上を行けるのです.
11月くらいまでは最高のシーカヤックシーズンです.
是非ツアーご参加ください!

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