2022年11月の出来事



写真:内房某所のグンバイヒルガオ.
暖かな日差しの中でまだまだ花が咲いています.

今回の更新作業中に気づいたのですが,いつの間にか「カヤック日記」開始から20年を過ぎていました.
初回はホームページを開始した2002年6月でした.
シックスドーサルズ自体は1998年から細々と始めたのですが,ホームページ無しでの営業が3年以上ありました.
今考えると驚くような事ですが,当時はそれほど珍しくも無かったかと思います.
知り合いのお店に簡単な手書きコピーのチラシを置いてもらったりしながら営業していました.
ホームページの基盤はパソコンに詳しい義弟が作成してくれて,パソコンの事を全く分からない私に初歩から更新の仕方まで教えてくれました.
当時からHTMLを書き換える事で更新する方法でしたので,今でもそうしていますが,技術的にほとんど進歩していませんし,ホームページのベースもほぼ当時のままという珍しい状態です.
古臭い様式に見えるというご意見もありますが,長年馴染んだホームページの姿が自分には愛着があり,義弟が苦労して当時作ってくれたデザインを変えるのも勿体ないという感じがしています.
いつの日か営業を終了するまで,多分このままのデザインでやっていく可能性が高いように思っています.
カヤック日記のページに関しては昨年からブログサイトBloggerにも同時に掲載し閲覧しやすいように致しました.
いろいろと見辛い点など多々あるかと思いますが,今後ともどうぞよろしくお願いいたします.


写真:30年近く見ている館山湾に浮かぶ雀島ですが,その姿はほとんど変わりません.
地上ではいろいろなものが人により形を変えていきますが,馴染みの姿でいつも迎えてくれると岩ひとつでも愛着が感じられます.

まずは11月のTwitter投稿より引用します.(投稿日が投稿内容の観察日ではない場合もあります)

1日
「kayak 海を旅する本」最新号出ました!
藤田連載の「カヤック乗りの海浜生物記 」は「海を旅する鳥 編」です。
Twitter上で見たアラスカからニュージーランドまでのノンストップ渡りを行ったシギについての投稿(※)をきっかけに書いた内容になっております.
amazon Kindleでお気軽にお読みいただけますので是非よろしくお願い致します!

2日
21:50頃館山市の真上を北北西に火球が飛んで行きました.
とてもきれいでした!
その後,Twitterで火球を検索したら今日はおうし座南流星群だとかで結構こういうのが見えていたそうでした.
こういう自然現象は何度見ても驚きを与えてくれますね.


写真:しらせの船首と小さく見えるカヤック.
カヤックの長さが5.5mです.

4日
この日は開業間もない頃からのお客様Wさんご夫妻ご参加でのカヤックツアーでした.
午前までの強風もパッタリ止んで昼には予想以上のベタ凪に.
館山湾は鏡ケ浦とも言いますが,まさにそんな感じでした.
折角のベタ凪なので岸近くから眺めるつもりだった館山湾に錨泊中の南極観測船「しらせ」の見学に行ってきました.
館山湾はいろいろな船が停泊するのでシーカヤックではこういう楽しみもあったりします.
碇を下して沖で停泊している船を見学させてもらう時には,まず十分に離れてアンカーが打ってあるか確認します.
出発間近で作業中の場合もありますから,船が動き出したら大変です.
船橋にいる船員さんから見えやすい,しかも,もしも動き出すにも邪魔にならない横方向の位置からしばらく離れて観察する事が大切と思います.
写真は少し近づきすぎましたが,このあと船員さんが甲板上から「気を付けてお願いします」と優しく声をかけてくれました.
船対船の関係ですが,サイズが違いすぎますから乗っている方々の状態を十分に確認しながら迷惑が掛からないようにすれば場合によっては休息中の船員さんとお話ししたりできる場合もあります.
ただし基本的に他船から距離を置くのが通常ではありますから,十分に注意が必要です.
また自衛隊など軍用船の場合は特に気を使った方が良いようです.
以前,潜水艦の上で釣りをしていた自衛隊の人と言葉を交わしたこともありますし,しらせも自衛隊の所属ではありますが念のため.
近くで聞くエンジン音は船が生きて呼吸しているんだなあという感じを受けました.
あと接近するまでの道中ではずっとラッパの練習音が聞こえてたんですが,近づいたら止まってしまいました.
館山湾の真ん中は楽器練習にも最適でしょうね.
このあと数日館山湾に留まってから一旦東京に戻り,その後南極に向かったとネットで情報が公開されていました.
航海のご無事をお祈りします.


写真:ミサゴvsミサゴ.このあと2羽で山の方に飛んで行きました.

5日
ミサゴがミサゴを追っかけてるところに出くわして慌てて撮りました.
2羽で鳴き交わしながら並走したり,円を描きながら飛んでいるというのはたまに見られるのですが,激しく猛追というのは初めてでした.
トビがミサゴの魚を盗もうとしてるのは見慣れてるので,またトビが来たなあ~と気軽に構えていたんですが,よく見ると追う方もミサゴでした.
追われてる個体が魚を捕るのにダイビングした直後に,もう1羽が飛んできて猛追開始したのですが,追われている方が魚を持っているわけでもないのに不思議でした.
テリトリー争いなのでしょうか?

7日
YouTubeに「2022年6月13日 千葉県館山市平砂浦海岸ウミガメ産卵環境について+産卵痕跡解説」を追加しました.
館山市のウミガメ産卵環境を現場で説明してあります.
あとは運よく撮影中にウミガメが上陸した痕跡が見つかったので,それについても少し説明してあります.
風の音がかなり入ってしまっていてボツにしようかと思っていたのですが,一応アップしておきました.
お聴き辛い点多々ですが,よろしくお願いいたします.


写真:とても暖かい日が幾度もあり狂い咲きのハマボウフウ.

10日
先月,海岸で初めて見た種類のハエトリグモですがマミジロハエトリ♀でした.
今回もクモ専門家の馬場友希さんに教えていただきました.
いつもありがとうございます!
頭のゴールドな輝きがとてもきれいでした.
南房総の海岸で見られるクモリストをまとめたいなと感じました.

11日
鯨類のストランディング(海の生き物の漂着,座礁)の際にお世話になっている山田格先生が登場している記事を見つけました.
山田先生には2001年の館山でのコマッコウ調査以来お付き合いいただき,本当にいろいろな事を教えて頂き,お世話になっております.
今回の記事は2011年に津波で損壊した陸前高田市立博物館に展示されていたツチクジラの標本修復の件でした.
千葉沖で捕獲されたのツチクジラだったのですね.
山田先生,関係者の皆さま本当にお疲れ様でした.
ちなみに南房総では長年ツチクジラを捕獲してきましたが今年の不漁の影響で操業が中止していることを先日知りました.
ツチクジラが東京湾に回遊していた時代に勝山で捕鯨が始まり,それが太平洋沖に出漁する時代を経て,とうとうツチクジラ自体が見つからなくなったという事が時代の経過を感じさせます.
野生の生き物を捕獲して流通し続けることの難しさ,その事の限界がどこにあるのかについての事例のひとつと言えそうです.


写真:完熟したグンバイヒルガオの種子.
長年記録していますが,実が熟すのはまだほんの一部です.

11日
先日ご紹介したエスキモーロール.
GoProでも録っていたので載せてみます.
当方住所のすぐそばにある海での撮影でしたが,改めてこうやって見てみると館山の水は本当にきれいですね.

11日
ソロで館山湾を漕いでいる時にウツボが水面で泳いでいました.
たまたまGoProの撮影を試していたところでしたので画像が残せました.
ウツボは珍しくも無いですけど,沖合数百メートルで海面で顔を水面から出そうとするような様子で泳いでいて,考えてみたら海底にいる種類だから,「何か困ってるのかな?カヤックに乗せて浅瀬に連れていくかな…」と少し考えて噛まれそうだからやめておきました.
以前,海面で溺れているミツバチを拾い上げて刺された事を思い出しました.
痛かった...
狭い磯にへばり付いて暮らしてるウツボみたいな魚が他所の個体群と合流して遺伝子交換する為にこんな旅みたいな行動をしたりするのかなあ?という適当な想像もしてみたんですが,実際これはどういう状態だったのか少し気になってます.
まだ若い小ぶりな個体でした.


写真:漂着していたオオセグロカモメ若鳥の死骸の立派な翼.

12日
昨日はオオセグロカモメの若鳥(若齢で模様での識別が難しく多分です)の死骸,今日はフルマカモメの死骸と大型海鳥の死骸続きでした.
大型カモメの死骸は意外と見ないので,今回初めて間近でその大きさを感じられました.
身体が意外と重いのにも驚きました.
これでは大きな翼が必要なわけで,大型化する事の利点は何だろう?と思ったりしました.
例えば小型カモメのユリカモメと比べてみたら身軽で餌も少なくて済みそうですし,いろいろ便が良さそうに見えたりします.
しかし死骸が滅多に見つからないという点で考えると大型の鳥の方が何かしら利点が多く生存率が高いという事なのでしょうか?
いろいろ想像が膨らみます.
フルマカモメは鼻に特徴があり嘴全体の形が独特で判別が楽です.
そしてフルマカモメの死骸の下から出てきた甲虫のハネカクシは初めて見る種類でした.
背中の模様が独特ですので,専門の方なら種が分かりそうですが.
以前フルマやコアホウドリなどの死骸を山階鳥類研究所に送ったことがありますが,今回のも連絡すべきか迷ってます.
フルマの方は後で場所が分かるように埋めておいて必要であれば取り戻せる状態にしてありますが結局報告しませんでした.
漂着死骸は鳥に限らずそうですが,その生き物の価値や標本の必要が一般には分かりづらく,必要な人に情報も標本も届かないという状況があるはずです.
種に関わらず漂着情報をネットで気軽に登録できるようにして,必要な場合は連絡するという流れが良いような気がします.
以前,シックスドーサルズとして「Stranding network by Kayakes」という漂着生物情報のメーリングリストをやっていた事がありますが,Yahooのメーリングリストサービスが終了した時に終えてしまいました.
実際いくらかの情報が届きましたし,そういった海の生き物の漂着事例を即時的に共有できていましたので有意義ではありましたが,やはり文章ベースではなかなか手間ですし,自由登録制のシンプルなデータベースが良さそうですね.
改めてそういったページを構築するにはなかなか大変ですし管理も難しそうなので個人で出来る感じはしないで,誰か(どこか)の関係者の方,いかがでしょうか?


写真:フルマカモメの死骸の下で見つかったハネカクシの一種.
地味ですが,砂浜海岸の生態系においてかなり重要な存在.

14日
今シーズン初ユリカモメ確認そして低空飛行中の巨大なUFO?が浮いていました!
とか書いてみましたが,UFOではなくて蜃気楼に浮いた城ヶ島と三浦半島です.(確認できなければ未確認飛行物体UFOではありますが...)
南房総から対岸の神奈川県三浦半島を見ると冬には大抵蜃気楼でこのように浮いています.
しかし遠いので,双眼鏡などで見てみないと写真のようには見えません.
蜃気楼を見た事が無い方は是非冬の南房総で蜃気楼見てみてください.
水温が高く気温が低い条件で見られる下位蜃気楼です.
見えるはずがないものが見える上位蜃気楼の場合は逆で水温が低く気温が高くなった場合のものですが,南房総では水温と気温の関係が逆にならないので上位蜃気楼は見たことがありません.
水平線は皆さんなかなか目を向けないですが,稀にはイルカの群れが通ったり,いろいろと面白い発見がありますよ.

16日
この日はダイヤモンド伊豆大島でした.

21日
この日は午後から館山市の太平洋岸,平砂浦海岸で海浜植物の様子を見てきました.
ちょうど満潮時で波も高く大迫力でした!
波の写真を沢山撮ったので,いくつか繋げてみました.
美しく巨大な波の儚く短い生涯をご覧ください.


写真:遥か遠くで風から生まれた波は進むに従って整い,そして地面と出逢って短い生涯を終えます.

26日
東京湾フェリー公式Twitterにフェリーからザトウクジラが観察された件の投稿があり,リツイートしました.
2021年6月にはシャチも同Facebookで投稿されており,東京湾フェリーのSNSは東京湾海上の定位置観察記録としての価値がありますね.
東京湾は関東の捕鯨の発祥地でもありますし,本来,餌が豊富で穏やかな内湾ですからクジラが来たがる場所なのだろうなと思っています.
近年三宅島近海でザトウクジラが多数見られていますが,東京湾もこれから先彼らの生息候補地になる可能性大と思います.
しかし定置網,航行大型船舶が非常に多く,それらとの共存がうまくいかないでしょう.
東京湾では多数のザトウクジラが漂着していますが,体表に網の模様が残っていた個体もありますし,定置網の混獲も確認されています.
このフェリーから見られたザトウクジラが無事に暮らしているのか心配になります.

29日
この日曜日は朝まで凄まじい強風の海でしたが,昼からは予想通り風も止み太陽が照らし,暑いくらいの穏やかな海となりました.
ここのところこのパターンが多いような?
この日のツアーご参加は開業間もない頃からのお客様Sさん.
昔と変わらずパワフルに漕ぎ続けます!
堤防のカモメたち横目に,雀島に寄り道したりしながらの,館山湾高速ツーリングでした.
帰り道はところどころ景色も見ながら.
大房岬の外周は歩いてでは見られない場所が多いので,大房岬が馴染みの人でもカヤックから見てみると新鮮に感じられると思います.
他にも崖観音や市街の様子など,地元の方でも新しい視点となると思います.
是非シーカヤック体験してみてください!

29日
ポッドキャスト南房総海音日記に「2022年10月のカヤック日記」をアップしました.
海浜植物やシーカヤッキングからエスキモーロール,イルカの観察等に関する内容となっています.
その他,文章では書ききれなかった事も加えてあります.
どうぞよろしくお願いいたします.


写真:海岸で菓子を埋めているハシボソガラス.

29日
海岸で見たハシボソガラスが何かを咥えて砂の中に埋めては,また掘り出して咥えて移動し,また埋めては取り出しして最終的にきれいに埋めて去って行きました.
掘り返してみてみるとイカの駄菓子みたいなものでした.
もしかしてモズの早贄ならぬカラスの早贄なのでしょうか?
海岸ではカラスは良く見られる生物ですから,海岸生物のひとつとして捉えています.
漂着物の分解にかなり貢献している存在ですし,なにより生態が興味深いですから飽きません.

30日
かはく【国立科学博物館公式】Twitterで
「日本周辺には多くのザトウクジラが来遊します。
20℃前後を維持する温かい海で子育てをするザトウクジラですが、近年、より北の海域である奄美諸島や伊豆諸島(三宅島周辺)でも観測されています。
15年前は約13度だった水温が、現在20度と上昇傾向にあるのです。」
という投稿があり,リツイートしました.
館山でザトウクジラを普通に観察できる日が来るのかもしれないけれど…複雑な気持ち.
上記フェリーの記事でも書きましたが,定置網が多いので心配なのです.
ちなみに長年お世話になっております国立科学博物館動物研究室の田島木綿子先生より拡散希望のご依頼頂いております「クジラの鼻水調査」が三宅島のザトウクジラを対象にして行われています.
私の尊敬する同館,山田格先生もご参加されています!
ドローンでクジラに接近し,所謂潮吹きの時に吐き出される呼気に含まれる水分を採取してDNAなど含まれている情報を採取するという,つまり田島先生,山田先生が国立科学博物館として行ってきたストランディング(漂着鯨類)の調査の大事な部分,「対象生物を殺さず,捕獲もせずに生態解明を目指す手法」の延長にある調査です.
クラウドファンディングも始まっています.
クジラの鼻水から何が発見されるのか!!鼻水調査!是非ご参加ください!


写真:地上はヒトで埋め尽くされそうな現代でも流石に海の上はまだ空いています.

Twitterの引用は以上です.
今月もいろいろな事がありました.

ここで,やや唐突ですが,砂浜海岸における「人間収容量」の必要性について書かれた一文をご紹介します.
これは1990年に出版された本に書かれていた事ですが,既に30年前から砂浜海岸への人の出入りの量を考える必要について意見があったという事になります.
砂浜は無尽蔵な存在として人が自由に活用することが出来る場所として,特に日本では海岸のほとんどは国有地であるためにアクセスが解放されています.
また,構造物を造ることは許認可が必要ではありますが,海岸清掃をはじめ,個人が海岸を部分的に改変したり手を加える事についての問題指摘はされてきませんでした.
実際に私が南房総の海岸で砂浜及び砂丘の様々を観察してきた中で感じていたものが,砂浜はただの砂の山ではないという事です.
砂の中にも独特の生態系があり,ヒトからすると一見厳しいその環境に適応し,むしろそこでしか暮らせない姿に進化した生き物が無数に存在するという事が十分に理解されていないと実態しています.
「砂浜海岸の生態学 (Ecology of Sandy shores)」というこの本を私が読んだのは日本語版が出版された2000年代初頭でしたので,この文面をそのまま覚えていたわけではありませんが,かなり影響を受けた結果のこれまでの観察だったと今,感じています.
先日からこの本を必要があって読み直していたところでしたが,この一文は是非ご紹介したいと感じ以下に引用させていただきました.
コロナ禍において突然,そして急速にビーチクリーンの頻度が高まっている中で,海岸で繁殖,休息,採餌中の野鳥への配慮をはじめ,微生物も含めた海岸生物にとっての餌資源の除去,砂浜の踏みしめによる海浜植生への影響といったものがまず見られます.
更には南房総でも一部用いられている移動式機械(清掃専用車両,一般重機)を用いた清掃による影響など考えることが沢山あります.
今一度この文章を念頭に置いて活動をお願いしたいと感じております.
それらの活動を行っている方には是非この本を読んで頂ければ,一見しただけでは見えてこない砂浜海岸の姿が見えてくるようになると思います.
この本では,この一文に至るまでに砂浜から砂丘にかけての本当の姿をこれ以上ないくらいに調べ上げた情報が分かりやすくまとめられています.
砂浜に手を加える前に少なくとも代表者の方はこの本を読み,その視点を持って実際に自分が関わろうとしている砂浜海岸の素の姿を十分に調査してみる事をお勧めします.


写真:ほとんど人の入らない海岸の漂着物の下から発芽したグンバイヒルガオ.
漂着物は湿度と日陰を漂着種子に提供し,その後は肥料となり植物を育てます.

「砂浜海岸の生態学 (Ecology of Sandy shores)」A.C.Brown & A.Mclachlan 著 須田有輔・早川康博 訳 東海大出版会 「13 保全と管理」p288より引用 括弧内補足は藤田

「砂浜海岸から砂以外の物を除去することも,とくに,相当の期間にわたって何度も繰り返し行われる場合,砂ほど明瞭な影響は出ないが,しばしば油断のならない事態を引き起こす.たとえば,普通に行われていることだが, 海水浴場から漂着物,海藻や他のデトリタス( Wikipedia )を除去すると,砂輸送と前砂丘の安定化に影響を与えるだけでなく,砂浜海岸動物の隠れ家や餌を奪い去ることになるかもしれない.ハマトビムシ科の端脚類のような半陸生動物の場合,砂を吸い上げふるいにかけて異物を残すように設計された移動式機械によって取り除かれてしまう. この他,砂浜海岸で行われる人間による干渉には,砂浜上での車の運転をはじめプラスチック容器やごみの投棄などがある.
 人間活動は砂浜システムの下方にある地下水の水位や組成も変化させることがあり,その結果,浸食,堆積のパターンや砂丘の動植物相が変化する.
 砂浜の上に人がいることやいそ波帯での海水浴は,動物相の活動に顕著な影響を及ぼし,海鳥の潮間帯での摂餌を妨げたり魚類を沖合へ追いやったりする. スナガニ属Ocypodeのような半陸生の甲殻類はますます夜行性になり,人が砂浜にいる間は巣穴から出てこなくなる. それにもかかわらず,砂浜海岸の公共への開放を止めようという声は上がらない. なぜならば,砂浜海岸は観光や地域住民の憩いの場として,社会・経済的な価値が高い一級の親水空間だからである. しかし,砂浜海岸がリクリエーション目的で開発される程度には限界があり,また,砂浜海岸を同時に利用できる人々の数にも限界がある. そこで,この限界を定義するものとして,“人間収容量”という概念を提唱したい.」


写真:護岸で覆われ砂浜は狭くなっている館山市の太平洋岸に広がる平砂浦の海岸.
特に東部がこのような状態になっています.
ウミガメの産卵地,海鳥の繁殖地としての機能は消滅しています.



お知らせ

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随時活動報告,南房総の海の風景をお伝えしております.
是非フォローお願いいたします!

ポッドキャスト(インターネット音声配信)を始めました
運転をしながら,仕事で作業をしながら,音でブログを気楽に「読んで」頂けるようにポッドキャストでの配信を始めました.
文章では書ききれなかった事なども録音時に思い付きで加えてあります.
その他に波音などの海辺の環境音,海に関わる人のお話しなどもご紹介しております.
是非お気軽にお試しください.

パタゴニア


 2022年10月の出来事


写真:投稿での登場頻度が急速に下がり飽きたのかな?と思われていそうなクモですが,日常レベルに落ち着いてチェックしてます,これは海岸で初めて遭遇のマミジロハエトリの♀.頭のゴールデン具合が素晴らしかったです.


写真:投稿での登場頻度が急速に下がり飽きたのかな?と思われていそうなクモですが,日常レベルに落ち着いてチェックしてます.
これは海岸で初めて遭遇のマミジロハエトリの♀.
頭のゴールデン具合が素晴らしかったです.

まずは10月のTwitter投稿より引用します.
ちなみに投稿日が投稿内容の観察日ではない場合もあります.

5日
波打ち際近くに小さなカニグモの仲間がいました.
強い風を利用して瞬間移動してて意外でした.
この仲間はいつも草の周りでジッとしてほとんど動かずにいて,動く時もノロノロという印象だったのですが.
自分にとってクモはまだ知らないことだらけです.
ちょうど1か月ほど前の画像です.
きれいなクモでした.
種は分からず...
追記:コハナグモとSNS上で教えていただきました!

6日
先月の写真を整理中なので過去の画像が続きました.
これも1か月前の写真.
海岸道路沿いの茂みにあったミツバチの自然巣です.
私は初めて見ました.
最初変なところにプチプチが絡みついてるなあ~と思ってました.
が近づいてみるとミツバチが沢山!
近くで見ないと見分けがつかないほど断衝材に似ています.
次に見に行った時にはもぬけの殻になっていてスズメバチが中で何かを食べてました.

写真:ハマナタマメの種子.美味しそう!と思った方はご注意!有毒です...

写真:ハマナタマメの種子.
美味しそう!と思った方はご注意!有毒です...

9日
外房方面でハマナタマメ,グンバイヒルガオ,ウミガメの巣の状態を確認してきました.
ハマナタマメは最も大きな株で鞘が凄い数あり,なかなか花の咲かなかったうえに,何かの動物に食害に遭った株では葉が一部とても小さくなっていました.
この夏に発見の小さなグンバイヒルガオの株ではイモムシが食事中.
エビガラスズメというガの幼虫のようです.
以前グンバイヒルガオで見たものより表面がザラついていたので別種かな?と思っていたのですが,同じようです.
前回のは砂に潜ったまま頭を出して葉を齧っていました.

18日
今日は久しぶりに打ちあがってるものをジックリ見てみながら浜を歩きました. カツオノカンムリとカツオノエボシが結構ありました.
あとはクジラの骨も見つかりました!
首のところですね.頭骨のすぐ後ろの骨です.写真だと上下が逆さまになっています.
ビーチコーミングの季節になったなあという感じでした.

写真:ビーチコーミングでは自然物以外にこんなレトロな瓶も見つかります.これはTATEYAMAと文字が入っていたご当地もの!

写真:ビーチコーミングでは自然物以外にこんなレトロな瓶も見つかります.
これは「TATEYAMA」と文字が入っていたご当地もの!

19日
チゴハヤブサを初めて撮影しました.
この辺りでたまに見かけるチョウゲンボウと思っていたのですが帰って写真を見たらチゴハヤブサでした.
雨が降っていてレンズがが濡れないように気にしながら撮っていたので,ちゃんと観察もせずにチョウゲンボウと思い込んで撮っていました.
遠くを飛んでいる,それっぽい鳥は見たことがあるんですが,近くで撮影できたのは初めてで嬉しいです.
贅沢を言えば,もう少し明るければ良かったのですが.
南に渡る途中なはずですが,もしかして南房総で越冬するのでしょうか?

21日
エスキモーロールってご存知ですか?
本来は転覆した場合の対処として存在するスキルなんですが,シーカヤックでは夏の暑い日にカヤックに乗ったまま水を浴びたい時や,水中を眺めたい時に水中メガネを付けて逆さまになったり,カヤック(パドル)の扱いの幅を広げる練習としても活用したりできます.
例えばイルカの群れが寄って来てくれたら,エスキモーロールでカヤックに乗ったまま水中観察,更には撮影もできちゃいます.
投稿では20年以上前の館山に居着いたミナミハンドウイルカ群れを観察していた時期に撮影した写真を貼ってあります. (当方ホームページより)
ちなみにまだウェアラブルカメラは存在していませんでしたし,当方デジタル化もしていなかったので,手巻きのニコノスという全天候型フィルムカメラでの撮影でした.
36枚撮ったら岸に上がってフィルム交換という呑気で平和な時代でした.
しかし撮影コストが高く,フィルム代,現像代とかなり消費しました.
今もその写真は眠っていて何かに活用したいと考えています.
今ならウェアラブルもありますし,エスキモーロール撮影の可能性が格段に広がっています. 次の機会が楽しみです!
ただし,その後のデータ処理は大変なことになるでしょうね...

写真:遅ればせながらウェアラブルカメラデビューしました.YouTubeでいろいろな場面をアップしていきたいと思います.カヤックに乗る前のチェックでの撮影.

写真:遅ればせながらウェアラブルカメラデビューしました.
YouTubeでいろいろな場面をアップしていきたいと思います.
カヤックに乗る前のチェックでの撮影.

23日
「シーカヤッキング 2022年10月21日 千葉県館山市沖ノ島」をYouTubeにアップしました.
ソロシーカヤッキング気分で沖ノ島を漕いでみてください.
解説にはシーカヤッキングの安全についても書いてありますので,是非読んでみてください.
沖ノ島は初心者のカヤッカーが楽しむのにも適した手軽でちょうど良い感じでシーカヤッキングの楽しみを凝縮させているようなスポットです.
私自身も館山でシーカヤックの経験を積んできましたが,初心者の頃にリカバリーやエスキモーロールといった練習をするのに決まって沖ノ島に来ていました.
島に伸びる砂の橋は風向き毎にどちらかの海面が穏やかな場合が多く,安心して練習できる場合が多かったのです.
それに,20年以上前の沖ノ島はとても空いていました.
少なくとも海水浴シーズン以外は貸し切り状態で気兼ねせず浅瀬で練習が出来ました.
しかし,最近は有名になりすぎた感じもあり,少し気を使いますね.
それでも秋から春にかけては少なくとも海面はかなり空いています.
あとは地形の関係で船が通らないという利点もあります.少なくとも砂浜のすぐ前を通る事は無いですね.
もちろん最近はマリンバイクもありますし,その他釣りに来ている人の小型ボート等は通りますので注意が必要ですが,漁船やプレジャーボートのような存在が浅瀬に来ることはありませんので,それだけでも安心です.
ただ風が南から吹いている時にそういう練習をする場合は沖に流されていないか十分に注意が必要です.
また北寄りの風の日には島の先端部の岩棚の浅瀬は危険な波が立ちますし,比較的気軽なスポットとはいえ気を緩めれば遭難の可能性もありますから十分に注意してください.
沖ノ島は島の南西側に湾があり,島の先端部は岬の周りの波の特性を理解でき.北東側にも湾があり,これは海岸線を長く漕いでいくと幾度も通り過ぎていく環境のミニチュアのようなものになっています.
風向き,うねりの入ってくる向き,潮の流れ,湾内と岬先端部との状況の差,海底地形の理解といった様々な海環境が凝縮されています.
沖ノ島の周りをいろいろな海況で漕いでみるという事を繰り返してカヤックを練習していくと地形と海況の関係をシンプルに理解でき,その後にフィールドを広げて為のとても良い参考書となってくれると思います.



写真:ハマゼリの果実.

写真:ハマゼリの果実.

23日
kayak誌はもうちょいで80号です!季刊誌だから20年!
ちなみにわたくしシックスドーサルズ藤田連載の「カヤック乗りの海浜生物記 」は今号で60回です!
なんと連載開始から15年も経ったのでした!自分でも驚きです!
毎号の4,800文字を掛けてみると...288,000文字!
これからもどうぞよろしくお願いいたします!
ちなみに今回の表紙は編集長でシーカヤックガイドの野川さん.
連載依頼は一緒に房総で泊りカヤックツーリングしてる最中に切り出されて,1年くらいなら...と言って始めたはずなんですが...
最近では電子図書にもなっております,「カヤック乗りの海浜生物記 」はシーカヤッカー以外の海好き,特に海辺の生き物好きの方にも読んで頂きたい内容となっておりますので是非お気軽にアクセスしてみてください.

26日
ポッドキャスト南房総海音日記に「2022年9月のカヤック日記」をアップしました.
今回はウミガメの孵化時期での調査,海浜植物の記録,自転車と南房総の時代による変化に関する内容となっています.
話の流れで昔話が多くなっています.
館山も随分変わりました.
どうぞよろしくお願いいたします.

27日
すっかりミサゴの季節になり,頻繁に観察ができる季節になりました.
この日は2羽,昨日は3羽が一緒にいる場面に出逢えたりという状況です.
秋は特に複数個体が同時に見られ,個体同士の交流関係が観察できる季節のように感じます.
個体識別をベースにするとイルカの場合のように個体同士の関係が見えてきて面白そうです.

写真:カヤックを追い越していった大きなボラの群れ.夕暮れには皆でジャンプ大会を開始します.

写真:カヤックを追い越していった大きなボラの群れ.
夕暮れには皆でジャンプ大会を開始します.

30日
「海岸マウンテンバイクツアーサンプル 221028 南房総某所」をYouTubeにアップしました.
ツアーのイメージとしての動画ですが,南房総の海岸線の美しさや静けさといった良さも感じて頂けるかと思います.
特定のルートをベースにしていますが,あくまでイメージサンプルと思って見てください.
参加者の状況や希望に合わせて毎回アレンジをしていますので,全く同じルートをとるという事はほとんどありません.
またこの動画では道中の植物の解説や休息といった停止した状態でのツアーイメージを省いていますので,そういう点では実際のツアーとイメージが少し違うとも言えます.
53分とかなり長いですが,お暇な時に是非観てみてください.



31日
冬でも見られるウミネコに混じって大型カモメもちょこちょこ見られるようになってきました.
これから春にかけてはカモメ観察の季節です.
セグロカモメ,オオセグロカモメ,ウミネコ,カモメ,ユリカモメという通常メンバーに加えて,ミツユビカモメ,ワシカモメ,シロカモメといったややレアメンバーも登場し始めます.
楽しみですね~!
カモメなんてどれも一緒と思っている方も冬には少し気にしてみてみてください.
突然カモメの魅力に目覚めてしまうかも!?
投稿で載せたオオセグロカモメはカヤックから見上げても全然逃げない気の強い個体でした.
おかげで近くで撮れました.

写真:南房総にはまだ昔ながらのデザインの漁船が見られます.

写真:南房総にはまだ昔ながらのデザインの漁船が見られます.

さてTwitterの引用は以上となりますが,先に書いたエスキモーロールについて更に少し書いておきたいと思います.
エスキモーロールっていうものが「カヤックが転覆してしまう恐ろしい状況」と密接に結びついてイメージされている場合が多いと思います.
もしくはエスキモーロールを知らなかった方の場合では「え!カヤックってこんなに簡単にひっくり返るの?!?!」とか「エスキモーロールできないとカヤックに乗れないの???」,「もしかしてカヤックツアーってこれを練習するだけなの…」とかいろいろな想像が広がるかもしれません.
むしろ,それについて不思議や疑問や興味が湧く方はカヤッカー向きといえるかもしれません.
それについて,「興味ないけどただプカプカしたいだけ」と思われた方はカヤッカー向きではないと言えます.
ただ「カヤッカー」向けで無いだけで.カヤックに乗って体験をするには,その差はあまりないとも言えるかもしれません.
「カヤッカー」というのはカヤックを所有していないとしても,それについて真剣に生活の中である程度の量でそれについて考えて暮らしている人と言っていいと思います.
「カヤッカー=カヤックを持ってる人」で無いのは確かだと私は考えています.
少なくとも住環境の狭い日本においてはカヤックを保管することが出来ないという事だけの為にカヤッカーになることを諦める必要はないという意味でもあります.
そのためにもツアーではレンタルカヤックが準備されていると言えますし,その存在理由があると思います.
カヤックを所有しているのならツアーに参加するのは多くても時々で良いはずです.
時々得たい技術が出て来たり,漕ぎたいけどひとりでは少し不安という場合に利用するといったくらいでしょうか.

写真:今月はやけに多く見られたセグロセキレイ.気が強く,ハクセキレイやカワセミにも攻撃してました.

写真:今月はやけに多く見られたセグロセキレイ.
気が強く,ハクセキレイやカワセミにも攻撃してました.

エスキモーロールについての話に戻ります.
エスキモーロールは先に書いたように転覆したカヤックを正常な状態に回復させるための技術でありながら,その役割はそれを行うカヤッカーの想像力次第でいくらでも広がっていきます.
エスキモーロールを単なる「起き上がるスキル」と捉えてしまえば,それはそこまでです.
しかしカヤックの教科書には大抵それについてしか書いていないでしょう.
それではエスキモーロールは転覆さえしなければ不要なスキルであるという結論になってしまうので,敢えて「シーカヤックでは夏の暑い日にカヤックに乗ったまま水を浴びたい時や,水中を眺めたい時に水中メガネを付けて逆さまになったり,カヤック(パドル)の扱いの幅を広げる練習としても活用したりできます.」と書いてみました.
エスキモーロールの練習は苦行だし,転覆すること自体が災難なのだと考えてシーカヤックを漕いでいたら,いつもそれに怯えて楽しめなくなります.
挙句,カヤックは転覆するというイメージを払拭したいがために,カヤックを正しく伝えるべき側でエスキモーロールというものの存在を無かったことにしてしまうという方向に流れていく可能性もあります.
それは「自転車をちゃんと操縦しないと転びますよ」という当たり前となっている話と対照的です.
そういう事をしているからマイナーなイメージが抜けなくなるのだと思います.
自転車は多くの人が日常的に使用している,本来かなり難しい乗り物です.
カヤックよりも自転車の方が絶対的に難しいです.
ただ子供の頃から乗っているし,みんなが普通に乗っているから簡単そうに見えるだけです.
2本の細いタイヤでバランスを取りながら様々な地形を走る事の本当の難しさをすっかり忘れた頃に自転車は転倒します.
私自身,先日単純なミスで転倒し脛を腫らせましたが,なんだか子供の頃が懐かしく思えて来たりしました.
子供の頃に初めて補助輪を外した時の事をかなり鮮明に覚えています.
それだけエキサイティングな経験だったという事でしょう.
転んで覚えるという事ほどエキサイティングな事は無いのかもしれません.
失敗が許されない社会に生きているとその感覚が不安になっていきますが,転んだ先に成功があるという体験を子供の頃には繰り返し経験して,それで成長したのだという事を忘れてしまうのかもしれません.

写真:富士山を背景にしたサーファー.サーフィンほど転倒するものは無いですから精神面が鍛えられるでしょうね.南房総は太平洋岸(外房)の波の海と東京湾岸(内房)の穏やかさが両方楽しめる点が素晴らしいです.

写真:富士山を背景にしたサーファー.サーフィンほど転倒するものは無いですから精神面が鍛えられるでしょうね.
南房総は太平洋岸(外房)の波の海と東京湾岸(内房)の穏やかさが両方楽しめる点が素晴らしいです.

そう考えると,もし大人になってから初めて自転車に乗ったとしたら,補助輪を付けて走るのは恥ずかしいかというと,そんな事は無く,多分凄くワクワクした気分で自転車に乗れたと思います.
ちょうどカヤックを初めて体験する時のようなものです.
その時に生じるワクワクの中に転ぶかもしれないというドキドキが含まれているという事を意識する人もいます.
それが大きくなりすぎてドキドキがワクワクを覆い隠してしまうような場合もあるかと思います.
それでも実際に海に出てみればワクワクが急速に戻って来るのが感じられると思います.
どこかであなたがカヤックツアーに参加される際に「カヤックがひっくり返ったらどうしたら良いのかな?」と心配になったらガイドやインストラクターにいろいろとどんどん質問をしてみましょう.
訊けば訊くほど不安になるかもしれませんし,なんだ心配ないなと思えるかもしれません.
それが大事です.
心配から目を逸らしていると,結局不安なままですし,その時はその時考えるといったものでもありません.
出来る事,出来ない事は個人差があります.
最初からエスキモーロールで起き上がれる人は今までにひとりもいなかった筈です.
ではどうしたら良いのか?他にもいろいろな手段が先人の知恵により確立されています.
初心者の方のツアーであればガイドがある段階からは助けてくれますが状況はケースバイケースですし,経験の個人差もとても大きいですから,その時にどのような方法でレスキューするかについて単純な回答はできないはずです.
ただ,「これだけは自分でやってくださいね」という事はあります.
その「これだけは自分で」を自身が広げていきたい,そして自分で自分を助けられるようにしたいと考えられる人はシーカヤッカーに向いてますし,なれるはずです.
その延長にエスキモーロールがあります.

写真:葉脈がきれいなグンバイヒルガオの葉.

写真:葉脈がきれいなグンバイヒルガオの葉.

私にとってエスキモーロールはイルカを水中で観察する為のツールでした.
潮の流れの早い洲崎の海でイルカを観察していて,水中での観察を行うためにカヤックから降りるという選択は不可能でした.
カヤックと一体になったまま水中を見るのであればエスキモーロールとすぐに考えました.
幸いその直前まで友人といろいろなタイプのエスキモーロールの練習をしていて,水中での姿勢をお互い撮影して確認してみようとした時にエスキモーロールでの撮影を試みていたのでした.
それを磨き上げて,イルカの観察に使えるようにしました.
自ら転覆した状態にして水中で観察し,フィルムカメラでの撮影を行い,その後再起するまでの行程を徐々に確立していきました.
そうしているうちにエスキモーロールは日常的な行為になっていき,失敗する事が無くなっていきました.
第一に潮の流れが速い洲崎でカヤックから一瞬でも分離したりするのはとても危険でしたから命が関わってると考えて行動すればある程度の事が出来るようになるという事でしょう.
アウトドアの重要なところはそこです.
スポーツではなかなか死にませんがアウトドアは適当にやれば簡単に死ねる自然相手の行為です.
そういう真剣さは本当は日常的に自転車を漕ぐ時にでも必要ですが,みんなすっかり忘れていて,そうなると交通事故に遭ってしまいます.
アウトドアでは命が関わっているという事をいつも当たり前に考えて行動するという癖がつきます.
それが結果的に日常の安全を引き寄せる事になります.
それは技術面や身体を鍛えるという事よりも精神面での心がけや自分で考える,状況観察から判断といった面での成長が起きるからだと考えています.
結果的に技術を磨く事に対する真剣さも生じるわけです.
とても練習したのに結果的にエスキモーロールが出来なかったとしても,それは他のパドリングや艇のコントロール,バランス感覚という点での進化が起きるはずですから無駄にはなりません.
むしろ,その事の方が重要だと思います.
「できるようになる事よりもやってみる事が大事」という考えで是非シーカヤックを体験してみてください.

写真:海辺ならどこにでもいるという印象のイソヒヨドリですが,鳴き声の収録はなかなか進まずポッドキャストでまだご紹介できずにいます...

写真:海辺ならどこにでもいるという印象のイソヒヨドリですが,鳴き声の収録はなかなか進まずポッドキャストでまだご紹介できずにいます...



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 2022年9月の出来事


写真:夕焼けが早い時間に見られる季節.今月は写真のような日が落ちる際に見られる薄明光線を見る機会がかなりありました.


9月のTwitter投稿より引用します.
今月は(も)投稿が少なめでした.

8日
7月のカヤック日記をポッドキャスト「南房総海音日記」にアップしました.
今回は夏の間に時間が取りにくかった事と,暑さが激しい日が多く海岸での録音が難しかった事,更には家の近くで工事が続いており終日音がしていたために家での録音もできずにいた事などがあり,アップロードがかなり遅くなってしまいました.
収録は今回も海岸で録音しましたが,台風11号のうねりが寄せている館山市の太平洋岸,平砂浦(へいさうら)の砂丘上での録音でしたのでうねりの砕ける音がうっすらと聞こえています.
内容はウミガメの産卵状況,チドリたちのその後などです.
その他に加えた内容もありますので,既にお読み頂いた方も是非聴いてみてください.

8日
2006年から砂浜を走ってウミガメ調査やら付き合ってくれていたマウンテンバイク,Gary FisherのMullet(車種詳細 99spokes.com)を引退させました.
この自転車を買う前にはクロモリ(鉄)製フレームの既に10年乗っていたマウンテンバイクを使っていたのですが,さすがに鉄製の自転車を砂浜で使うのは厳しくどんどん錆びていき使える状態ではなくなってしまいました.
夏の間はツアーもありますし,毎日使い終えてからメンテナンスをするという余裕も無く自転車には可哀そうなことをしました.
当初,自転車と足とクルマとをエリアで使い分けたり,オートバイを使ってみたりと試行錯誤しましたが,結局クルマに自転車を積んで,大きな移動はクルマ,現地での探索は自転車で移動する方法が最も効率が良く,継続するならこの方法しかないと分かってからは自転車に無理して砂浜に付き合ってもらっていました.
そういう経験があったので,新しい自転車を購入する際には十分すぎるくらい吟味しました.もちろんかけられる経費の関係も含め.
ウミガメの調査のためだけに購入したわけではありませんでしたが,前の自転車で困った面を解消できるように,まずアルミのフレームを選択しました.
それに加え時代的にちょっと早めな採用のディスクブレーキが付いてるものを選びました.
昔ながらのホイールをゴムで挟んでブレーキするタイプだと、砂が咬んでホイールが早々に傷んでしまうのでした.
その点,ディスクブレーキなら問題ないはずと考えたのでした.
その基本的な2点は大正解でした.


写真:若いキョウジョシギとキアシシギ.この季節は渡り途中の異種が仲良く餌を食べている場面がよく見られます.

当初,ディスクのパッドなど消耗品を購入するにもネット上で専門部品を入手しにくく,もちろん未だに南房総に専門店は無いですし,その点では苦労しましたが現在ではディスクブレーキも普及し,ネットショッピング環境も整い困ることがほとんど無くなりました.
南房総でマウンテンバイクを乗るというのは,部品の購入という難題がまだまだあったのでした.
ですからたまに上京する予定があると自転車屋に立ち寄ってリストした部品を買ってくるという感じでした.
そもそも,このマウンテンバイクの購入が東京御徒町の知り合いが勤めていたアウトドア全般を扱っていたショップでの購入でした.
自転車に限らず,カヤックの道具もそうですが,日常的なものも含めちょっと一般的でないものはほとんど南房総には売っていませんでした.
ですから,例えばなにかしらの整備や日曜大工をしようにも工具から材木その他材料を購入するだけでも難しく,そのために君津のジョイフル本田まで車を走らせるといった状況でした.
ただし大工道具や材木屋はむしろこういう土地は職人が多いですから,お店の存在さえ知っていればそういうところでしっかりとした道具は買えました.
私が館山に越してきた1993年からで思い返してみると,街のお店の様子について言えば.まずコンビニが市内には2つしかなく,18時を過ぎると空いているお店はほとんどなく商店街も暗くなってしまうという状況でした.
20代で東京から越してきた自分には新鮮な驚きでしたが,勤めから帰ってくるのが遅くなると買い物ができないので週末に買い物という習慣となり,皆同じ境遇なのでしょう当時まだ数が少なかった週末のスーパーは混んでいた記憶です.
今ではスーパーもコンビニもいくつあるか分からないくらいありますし,遅くまで開店するようになり,道中の道路が混まないなども利点もあり,館山市街等はそういう面では都市部よりも便利だと思います.
スーパー等の大型店が増えたぶん,小さな商店はどんどん少なくなりました.
銭湯は当時も使っていませんでしたが,市内にいくつかあり,それももうありません.
今思い返してみると大昔のような,嘘みたいな世界ですが,ほんの30-20年前の事です.


写真:昔とほとんど変わらない船形港といろいろ変わった館山市街.海の色は昔よりきれいになりました.

話が逸れましたが,2006年に買った,今回引退したマウンテンバイクは2012年には痛んでいたかなりの部品を一気に入れ替えました.
多くの部品が痛み始めていて,特にボトムブラケット(ペダルを回す時に回転する部分の軸を包む部品)が固着してしまって外せなくなってしまいメンテナンスが出来なくなっていた問題等が出てきていました.
砂と潮風を浴びながら,強風でも当時は構わず出かけていましたし,自転車が働くべき環境ではありませんでしたから仕方ありません.
ウミガメの調査に加え,海が荒れてカヤックで出られない時にはトレーニングという名目で自転車で段差を越えたりするトライアルのような乗り方もしていましたので,そちらでの負担もかなりあったのでした.
この時に買い替えるか少し考えましたが,フレームはまだきれいでしたし,何より気に入っていたので,プロショップに依頼してボトムブラケットを外してもらえたことで解決し,あとは自分で部品交換をして乗り続けることにしました.
それからまた10年が経ち,今回はヘッドチューブ(ハンドル操作の軸になる部分)にある問題で修理しきれない部分が出てきて,その他の部品もこの夏に順番を待っていたかのように壊れだし,これで部品を替えても本体の問題が解決しない為に諦めました.
自分の身体にとても馴染んでいて気に入っていましたので大変残念だったのですが.
そんな感じで,この夏のウミガメ調査は非常に暑かった上に自転車のトラブルが多々出て何キロも自転車を押す場面が幾度かあったりと大変だったのですが、自転車の方もきっと疲れ果てていて大変だったんでしょう.
それにしても,こんなに沢山の時間海岸を走った自転車はそうそうないでしょうね….
まあ十分働いてくれました.
そのうち余裕が出来たら何か別の負担の少ない用途向けにレストアできないかなと思いつつフレームを倉庫へ仕舞いました.
本当にお疲れさまでした!


写真:様々な植物の中にポツンとあったハマナタマメ.(丸っこい葉っぱ)

ちなみにマウンテンバイク海岸散策ツアーはもちろん継続しております.
当方の乗る自転車はマウンテンバイクから実用性に的を絞ってアルミニウムフレームのグラベルロードとか呼ばれるオフロード気味のタイヤにドロップハンドルというものに変わりました.
ウミガメなどの調査の時にも出来るだけ家から自転車で出動し,クルマの利用頻度を下げるためには走るのが楽なカタチの自転車が良いのではないかという選択です.
マウンテンバイクは海岸での操作性やオフロードを走る事そのものは最高に楽しいのですが,楽に走れるという点ではロード系のカタチには敵わないかなと思います.
私は10代をトライアルという障害物競走的な競技をして過ごしていたためオフロード系の自転車が乗りやすく馴染んでいるのですが,今回はドロップハンドルで姿勢も違い,こういうタイプの自転車は小学生の時以来です.
なんだか妙に懐かしい気分になったりもしましたが,いろいろ装備も現代的になっており,その昔の記憶とのギャップに戸惑ったりしながら漕いでいます,
ツアーでお貸ししている自転車は安定の26インチマウンテンバイクで変わりません.
最近はホイールの径が大きくなってきたりという進化が見られますが,やはり26インチマウンテンは初心者の方から慣れた方まで安心して乗れるカタチの自転車だと考えています.
ツアーではマウンテンバイク初めての方でも,少し段差を越える練習なんかもしてみたいという既にマウンテンバイカーの方にも楽しんでいただけるよう,毎回アレンジしていますので試しに是非ご参加ください.
これから秋から初冬にかけて南房総の海岸線は空いていますし,気候も自転車を漕ぐのに気持ちの良い季節です.
是非お問い合わせください!


写真:マウンテンバイクでは十分走れたお気に入りのルートをドロップハンドルで走ってみるのはとても新鮮でした.

9日
外房方面で注目している海浜植物ハマナタマメ,グンバイヒルガオ,それとウミガメの巣の状態を確認してきました.
この夏に発見の小さなグンバイヒルガオではイモムシが食事中.
種類はエビガラスズメというガの幼虫のようです,
以前もグンバイヒルガオで葉を齧っているのを観ていますが,今回のものは表面がザラザラしていたので印象が違い別種なのかな?と思っていましたが,多分.
前回は砂の中に潜って身体の前半だけを砂から出して葉を齧っていました.その時のTwitter投稿
布団に入ったまま食事をしているようで行儀が悪い虫だな~とか思いました.
暑い日でしたので,むしろ砂の中が心地良いのかもしれません.
ハマナタマメは最も大きな株では鞘が凄い数あり,一方ではなかなか花が咲かなかったうえに何かの動物に食害に遭った株では葉が一部とても小さくなっていたりと株毎に様子が違い興味深いです.

12日
夏の間に行けずにいた海浜植生,グンバイヒルガオやスナビキソウ群落をチェックしてきました.
自宅から自転車で廻るのにちょうど良い館山市内エリアです.
新たにハマナタマメ×2とスナビキソウの安定群落も発見しました.
発見する度に観察対象が増えますが,台風などで消滅する群落もあり,継続的に観察すると耐性や発芽しやすい環境も感覚的に掴めてくる感じです.
ただ,それを客観的な表現で文字にするのは難しそうです.
この日は鮮やかなオレンジ色のハマカンゾウが咲き始めたのも確認しました.


写真:館山市沖を行く潜水艦と富士山とオオミズナギドリ.
館山沖は昔から結構高い頻度で潜水艦が通過します.
館山湾に錨泊する姿も良く見られましたが,最近は少ないかもしれません.
平和な南房総の海辺で軍用の乗り物を見るのは複雑な思いです,

12日
ポッドキャスト南房総海音日記に「2022年9月10日の洲崎の波音」をアップしました.
外海に面した磯に寄せる複雑な波音と生き物の鳴き声をお楽しみください.
ポッドキャストを始めてみて,改めて南房総の海岸の静けさに貴重さを感じています.
南房総でも場所によっては自衛隊のヘリコプターがひっきりなしに飛んでいたり,田舎特有の草刈り機の音,オートバイの爆音,そして昼,夕方と防犯防災の注意を告げる防災無線の音,羽田に向かう飛行機の音と様々な人工音があります.
それが録音に臨場感を与える可能性もありますが,私の好みとしては多くは省きたい対象です,
普段,自分の耳では無意識に必要ない音は頭の中の処理で音量が下がるそうで気になりにくくなっていますが,録音機はある音をそのまま拾うので,家に帰って聴いてみて「飛行機の音が入ってる!」と気づいたり,今まで「本当の音」を聞いていなかったもだという事を実感して驚いています.
南房総は映画やドラマ,CMのロケ地としても高頻度に利用されていますが,音の問題は「別録り」で解消しているそうで,せっかくの現場の自然音は利用されていないんだなあと勿体なく思いました.
そういった雑音のない環境での波の音,適度な風の音,鳥の鳴き声といった心地よく響く自然音をそのまま録音できる環境がまだあるという事を知る事で,改めてそういう静けさの貴重さを感じています.
貴重な音(が少ない)環境も含めて南房総の良さだという風に感じられる人が増えると良いなと思います.
今回の音は2分30秒です.
どうぞお気軽に聴いてみてください.
そしてできれば実際に南房総に来て,生の音でも体験してみてください.


写真:上記のポッドキャストを録音中.

17日
台風でこの週末も海は荒れてしまいました.
今年は週末に荒れることが多く困ります….
それでも,やっぱりシーカヤックは夏が終わってからが本番です!
秋は10月末くらいまでは初心者の方も楽しめますよ.
台風が全く影響していない日に当たればかなり幸せな体験ができます.
秋の海いいな~と感じていただけると思います.
関東の夏はですね,シーカヤックを漕ぐには暑すぎるんです.
それでも地上よりは涼しいのですが.
転覆の練習や再乗艇,エスキモーロールなどなど濡れながら練習したい中級者にはお勧めです.
写真は前の日で,この日は台風が遥か南にありましたが,まだ波も穏やかで風は心地よい程度でした.
そして時々青空という良いカヤック日和でした.

24日
凄まじい雷の後はダブルレインボーでした.
この直前まで凄まじい雷雨が何時間も続いていました.
雷を観察するのは嫌いじゃないのですが,今回は近すぎて久しぶりに本当に恐ろしくなりました.
しかし,そのあとにこういう素晴らしいものが見れたので,単純なものですぐにその怖さを忘れてしまいました.

25日
シーカヤックのツーリングは自転車のツーリングのようなものです.
釣りをするわけでもなく,移動そのものを楽しみ,景色を愛でながら写真を撮ったりという一日を過ごします.
のんびりする時もあれば,頑張って漕ぐ場面もあり,山登りのような気分もあります.
海の上をマンパワーで移動する楽しみ!
この日はほぼ鋸南町ツーリングでした.
本当に良いところです.
海から見た鋸南町は大変貴重な自然環境が維持されています.
訪れる時には,これからもこのフィールドを楽しめるよう環境とそこに暮らす人々の生活を大切に考えてお邪魔しましょう.
前日の嵐ですっかり空気がきれいになったようで,光がとても眩しい日でした.
水も透き通っていました.


写真:カヤックに乗ると(履くともいう),広大な海の上もあなたの行動圏となります.

27日
海浜植物の観察に出かけました.
イソギク,ハマゴウ,ハマゼリ,そして,この時期にグンバイヒルガオの発芽が見つかりました.
海浜植物は食べられるとかそういう実利的な意味での興味だけでなく,愛でる対象としても人の役に立てる存在と感じています.
もっと様々な海浜植物を愛でてあげてください.
きれいなのはハマヒルガオ,ハマユウ,スカシユリだけではないんです.
「ハマヒルガオを保護しています」という場合は稀ですがありますけれど,美しい紫の花を咲かせるハマゴウは人の目に美しい上に,その強い地下茎で海岸の砂丘を維持するという役目もしてくれているのですが,保護されるどころか邪魔者扱いされて草刈り機で駆られたり,重機で砂丘ごと崩されてしまったりひどい扱いを受けています.
ハマヒルガオやハマユウはその縁の下の力持ちの上で気楽に咲いています.
そしてハマヒルガオのように丈夫ではなく,限られた位置にしか棲息できない種もあります.
そして彼らは一様に地味な花を咲かせます.
人のいう保護というのは大抵の場合,その目的意識の中に「自分が見て気分が良いから」という事が無意識にあると考えられます.
かなり貴重になってしまった植物,生物でも見た目が気持ち悪ければ平気で除去してしまうのが人間の本性です.(ハマゴウの場合はきれいですが,丈夫すぎるので脅威と感じるようです)
そういう偏見に満ちた基準で生き物の保存に偏りを与えていること自体が自然界全体で言えば環境破壊でもあるという視点を持たなければ「保護」などしない方が良いでしょう.
満遍なく保護する事の難しさは大変なものです.
人間は保護などしなくて良いので破壊をやめれば良いだけの話だと思うのですが,それはもっと難しいのが現代です.
しかし,それもいつか変えざるを得ないでしょう.
ほんの50年後に,一例として海浜植物がどういう扱いをしてもらえるようになっているのかを見れば,それが結果だと思います.
世の中がそう言いだす前に南房総がそれを先に始めても良いはずです.
誰か(どこか)の真似をして後を追いかけているうちは,その本当の良いところを活かすことはできないでしょう.


写真:漂着物の中で逞しく芽を出したグンバイヒルガオ.
漂着物が多い場所には種子も打ちあがりやすいのですから,漂着物を一掃してしまえば彼らのような植物の分布拡大の可能性も大きく下げる結果となるでしょう.

28日
ミサゴに遭遇する頻度が急に高まる季節になりました.
今日も1羽に遭遇.
写真を見たら脚を下して変な格好,ちょうど糞をしたところでした.
ミサゴは魚が主食です. ということはミサゴの糞を浴びたら魚臭くて大変でしょうね...
私は未経験ですが,同じく魚を主食にしているアオサギは巣に近づきすぎて糞爆弾攻撃を受けた経験があります.
意外と臭くなかったような...
あと7月5日に産卵されたウミガメの巣で脱出穴が見つかりました.
巣内調査は行っていないので,いくつの子ガメが海に帰ったのかは想像するほかありません.
頑張ってオトナになって,南房総に帰ってきてほしいです.
グンバイヒルガオはまだ少し花が咲いてました.


写真:淡さと強さが良いバランスの美しい黄色の花を咲かせるワダン.

29日
ポッドキャスト南房総海音日記に「2022年8月のカヤック日記」をアップしました.
長さは01:07:38です.
8月はやはりウミガメの話が多めになっています.
とにかく産卵の多かった今年の夏でしたが,子ガメが無事に巣から出た記録は少なくなっています.
ただし9月以降は可能な範囲での調査とし,時々の観察ですので脱出した穴が風が吹いて再度埋もれて分からなくなっただけという場合も多いと考えています,
子ガメが海に帰った数を確認してはじめて調査の意味があるという訳ではないと考えています.
調査を始めた初期に子ガメが脱出する予定日前後の夜間に観察を繰り返したことがありますが,観察をしている時に限って子ガメが出てこないという事がありました.
地中の子ガメがその周りを歩く人の振動に気づかない訳が無いのです.
それに気づいてからは脱出を観察するための調査はやめました.
そして巣を掘り返しての調査もその後にやめました.
ウミガメが作った巣穴はウミガメにしか分からない仕組みがあるはずです.
そして巣から出て海に向かうことが出来なかった子ガメを助けることはウミガメや生態系全体を見渡した時に必ずしも良い事ではないと考えています.
もちろん巣の中で死んでしまう子ガメの事を考えればとても悲しいですが,それは自然の中で起きている事であるはずです.
それについて人間が影響を与えてしまった結果,それが起きているのだと考えるならば,そこで子ガメを助けるのではなく,原因を探り,それを取り除く事を考えていくべきだと考えています.
私にできる事はとても限られていますが,観察対象としているエリアで起きる単純な問題について,素早く介入して早い段階でシンプルにできるだけ問題のない方向に解決するよう地味に行動しています.


写真:ヒトが創り出した物のカタチで言えばこれほど洗練されたものはないシーカヤックですが,その中でも特に美しいEddyline Falcon.

30日
この日はカヤックでないと観察に行けない場所のワダンという海浜植物の観察とハヤブサ探しでした.
夏の間乗らずにいた私のプライベート専用カヤック(?)のEddyline社のFalcon16を久しぶりに浮かべました.
ハヤブサを探すのに最適な艇ですね.名称が同じというだけですが.
夏の間世話をしてやらずにいたので,白い美しい艇に苔が生えてきて少し緑がかっていました….
家で水道を使って洗うよりも海の中で洗う方が環境に良いですから,それも目的でした.
ハヤブサは残念ながら見つかりませんでしたが,ワダンはきれいに咲いてました.(上の写真)
ワダンはあるところには別に珍しくもなくありますが,無いところには全くないという植物で,その生息状況が気になっています.
この日は気温は高かったですし,水がとてもきれいで,漕ぎ終わって水に浸かりながら苔を掃除していましたが,適度な温度の水が気持ち良くずっと浸かっていたい感じでした.



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運転をしながら,仕事で作業をしながら,音でブログを気楽に「読んで」頂けるようにポッドキャストでの配信を始めました.
文章では書ききれなかった事なども録音時に思い付きで加えてあります.
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 2022年8月の出来事


写真:とても暑い夏が終わりました.野島崎灯台をカヤックで沖から眺めるとこんな感じです.

写真:とても暑い夏が終わりました.
野島崎灯台をカヤックで沖から眺めるとこんな感じです.

やっと秋らしくなった9月の半ばに更新しています.
まずは今シーズンのウミガメの産卵記録をご報告しておきます.
根本,砂取,滝口は6-8月の毎日調査.
名倉,千倉,白子,丸山,海発,和田,平砂浦については月2回計6回の調査のため発見日=産卵日ではないこと,また時間が経って不明瞭な痕跡もあり,産卵判断について難しい場合もあります.
尚,「上陸のみ」は足跡のみで産卵するための行動を行った痕跡なし,「BPあり」は卵を産むための行動をとった痕跡(ボディーピット)はあるが卵は産んでいないと考えられるもの,「産卵」は卵を産んで海に帰ったと考えられる場合を示します.
ただし産卵に関しては卵を掘り出しての確認は行っておりませんので,産卵痕跡の状態から産んであると判断したものです.

写真:意外なほど浅瀬で海藻を食べている若いアオウミガメを見かけることがります.産卵しに来るのはアカウミガメでもっと大きな個体です.

写真:意外なほど浅瀬で海藻を食べている若いアオウミガメを見かけることがります.
産卵しに来るのはアカウミガメでもっと大きな個体です.

6/7 根本 上陸のみ(6/6は荒天により調査をお休みしていましたので,前日上陸の可能性もありますが潮間帯にあった足跡のため昨夜から今朝にかけてと考えられます)
6/11 滝口 産卵
6/13 平砂浦 産卵?(BPの状態が微妙であったため産卵していない可能性もあるが痕跡が不明瞭なため判断に迷う)
6/20 千倉 産卵
7/1 根本 産卵
7/5 滝口 産卵
7/5 滝口 産卵
7/10 根本 産卵
7/12 平砂浦 産卵
7/19 根本 産卵
7/21 千倉 BPあり
7/22 砂取 産卵
7/22 千倉 産卵(前日に記録し忘れた内容があったため,再度出かけたところ発見)
7/27 平砂浦 上陸のみ
8/5 海発 産卵
8/5 千倉 産卵
8/7 滝口 産卵
8/8 滝口 上陸のみ
8/9 滝口 産卵
8/21 根本 産卵?(アカウミガメが岩場の窪みから出られなくなっているところが発見され,その経路に産卵痕跡があったが産んであるか微妙)
8/25 根本 産卵
8/26 砂取 産卵
8/28 根本 上陸?(潮間帯に足跡とBPらしき痕跡があるが波で洗われており不明瞭なため判断が難しい)
8/30 平砂浦 上陸のみ
8/30 平砂浦 上陸のみ

写真:今シーズンは出逢う機会の多かった美しいトウネン.とても小さなチドリですが,あまりこちらを怖がらず近くで観察させてくれます.漂着海藻の中に暮らす生き物が彼らの食べ物です.

写真:今シーズンは出逢う機会の多かった美しいトウネン.
とても小さなチドリですが,あまりこちらを怖がらず近くで観察させてくれます.
漂着海藻の中に暮らす生き物が彼らの食べ物です.

産卵×16(確かなもののみ),BPあり×1,産卵かBPのみか不確かなもの×2,上陸のみ×5,上陸痕跡か不確かなもの×1の計25のウミガメの痕跡確認でした.
調査している砂浜海岸のそれぞれの距離は
平砂浦6㎞(相浜含む)
根本0.9㎞
砂取-滝口2.1㎞
名倉0.2㎞
千倉-瀬戸浜2.1㎞
白子-和田6.6㎞
計17.9㎞
全体で約18㎞の区間で16回の産卵となり,1㎞あたり0.9回の産卵,上陸回数で言うと0.7回となりました.
そういう頻度で南房総にウミガメが上陸して来たという事になりますが,場所は偏っています.
それは調査頻度も場所によって違い,頻度の低いエリアは数日風が吹けば痕跡は消えてしまいますから未確認の上陸が多数あるはずです.

写真:ハマナタマメの上で交尾するウラナミシジミ.この幼虫はマメ科が食草なので産卵している姿もよく見られます.

写真:ハマナタマメの上で交尾するウラナミシジミ.
この幼虫はマメ科が食草なので産卵している姿もよく見られます.

毎日調査を行っている白浜エリアの頻度を数えてみると
6/7 根本 上陸のみ(6/6は荒天により調査をお休みしていましたので,前日上陸の可能性もありますが潮間帯にあった足跡のため昨夜から今朝にかけてと考えられます)
6/11 滝口 産卵
7/1 根本 産卵
7/5 滝口 産卵
7/5 滝口 産卵
7/10 根本 産卵
7/19 根本 産卵
7/22 砂取 産卵
8/7 滝口 産卵
8/8 滝口 上陸のみ
8/9 滝口 産卵
8/21 根本 産卵?(アカウミガメが岩場の窪みから出られなくなっているところが発見され,その経路に産卵痕跡があったが産んであるか微妙)
8/25 根本 産卵
8/26 砂取 産卵
8/28 根本 上陸?(潮間帯に足跡とBPらしき痕跡があるが波で洗われており不明瞭なため判断が難しい)

産卵×11,上陸回数×15で不確かな8/28を省いて14回上陸うち11回産卵とすると,距離の合計が3㎞ですので,1㎞あたり4.6回の上陸,産卵は3.6回となります.
調査頻度が低いエリアも未確認のものを含めればこのような頻度で上陸が行われている可能性があると考えられます.

写真:今年もウミネコの幼鳥が北の繁殖地から沢山渡ってきました.黒っぽい個体がこの春に産まれたばかりです.野生って逞しいですね.

写真:今年もウミネコの幼鳥が北の繁殖地から沢山渡ってきました.
黒っぽい個体がこの春に産まれたばかりです.
野生って逞しいですね.

調査頻度の低い館山市の太平洋岸,平砂浦は以下のようになりました.
6/13 平砂浦 産卵?(BPの状態が微妙であったため産卵していない可能性もあるが痕跡が不明瞭なため判断に迷う)
7/12 平砂浦 産卵
7/27 平砂浦 上陸のみ
8/30 平砂浦 上陸のみ
8/30 平砂浦 上陸のみ

現在の調査頻度でのそれらの海岸のウミガメの上陸頻度は平砂浦で産卵×1(たしかなもの),上陸5回ですので,海岸長6㎞で1㎞あたりの産卵は0.2回,上陸頻度は0.8回となってしまいます.
そもそも平砂浦は東部に護岸が海岸線に迫っており,大潮の高潮時には砂浜が全て波に洗われてしまう範囲が広いため上陸して痕跡が残る可能性がほとんどないために低頻度となっているはずなのですが,そもそもそういった場所に産卵をしたとしても卵は無事ではないですから無駄な上陸を繰り返している可能性があります.
実際今シーズンも護岸に行き当たって産卵を諦めたケースが複数見られました.

写真:和田海発での産卵上陸痕跡.奥行きがあるので平砂浦ほど問題はないですが,奥の松林の手前にあるサイクリングロードに落下する母ウミガメがたまにいる事の問題と強力な台風が近年サイクリングロードに達する頻度が高まっています.

写真:和田海発での産卵上陸痕跡.
奥行きがあるので平砂浦ほど問題はないですが,奥の松林の手前にあるサイクリングロードに落下する母ウミガメがたまにいる事の問題があります.
更に強力な台風が近年サイクリングロードに達する頻度が高まっています.

一方,護岸は多いけれど砂浜の奥行きが比較的残されている千倉から和田までの海岸線はどうでしょう.
6/20 千倉 産卵
7/21 千倉 BPあり
7/22 千倉 産卵(前日に記録し忘れた内容があったため,再度出かけたところ発見)
8/5 海発 産卵
8/5 千倉 産卵
産卵×4回,上陸回数5回で海岸長8.7㎞ですので,1㎞あたり0.5回産卵,0.6回上陸となります.

調査頻度が同じ平砂浦と比べると
産卵頻度 平砂浦×0.2回 千倉-和田×0.5回
上陸頻度 平砂浦×0.8回 千倉-和田×0.6回
となり,平砂浦では上陸しても卵を産まずに海に帰って行ってしまう母ウミガメが多いという事になります.

毎日調査している白浜エリアには光害が多く影響していると考えていて,その状況を記録するために調査を始めたのですが,平砂浦のように光害が全くというレベルで無い好条件でありながら人為的に加工された地形によって影響が出ています.
先に書いたように平砂浦海岸は海岸の東部に特に多い護岸が産卵に影響していて,大潮の満潮時に行って見れば分かりますが現在の状況が産卵に適していないのは明瞭です.
比べて千倉-瀬戸浜,白子-和田にかけては海岸松林が維持されている場所が多く,海岸沿いに自動車道や建築物もほとんどないので光害は少ないですし,海岸護岸も平砂浦と比べればかなり奥まっている場合が多いなどウミガメの産卵に対する人活動の影響がやや少ない場所と言えます.
それでも海岸に沿った大きな道路が少ないのは良いのですが,私も調査で活用しているサイクリングロードがあり,落差1mほどの硬い路面に母ウミガメが落ちるという事例を少なくとも2例確認しています.
それぞれにウミガメの産卵に対する問題があります.

写真:台風で慌てて帰っていったキャンパーが残していった土嚢散らばる根本海岸キャンプ場.テントを抑えるために使っていたわけですが,想像以上の雨風に逃げ帰るような想定が出来ないキャンパーは大体こうです.単に宿泊費を浮かすことが目的でキャンプをしているのでしょう.

写真:台風で慌てて帰っていったキャンパーが残していった土嚢が散らばる根本海岸キャンプ場.
テントを抑えるために使っていたわけですが,想像以上の雨風に逃げ帰るような想定が出来ないキャンパーは大体こうです.
単に宿泊費を浮かすことが目的でキャンプをしているのでしょう.

以降は8月のTwitter投稿より引用します.
今月は投稿が少なめでした.

3日
10年前の今日,千葉県最南端辺りで漂着していたクサビフグの写真が出てきたのでご紹介しました.
フグと言ってもマンボウに近い種類でマンボウを小さくして速く泳げるデザインにアレンジした感じです. 興味のある方はTwitterで是非写真を見てみてください.
漂着海藻に埋もれるように頭だけ見えていたので,体の後半が欠けているような形に驚きました.
これは珍しいのではないかと思い,現場でスマホを使い調べたところ記録の少ない種だと分かり,それについてネット上でも記載していた神奈川県立生命の星・地球博物館に打診後に郵送しました.
あれからずっと標本室で静かに眠ってるはずですが,10年も動きがないので,いつか役に立つのだろうか?という気がしてきました.
担当の方によると「クサビフグの小型個体で,相模湾からの記録は少なくとも2006年までない」との事でした.

12日
クサビフグのように面白い形の幼魚が漂着してました.
形はフグの仲間っぽい?と思って調べてみたところネットで同じ魚が載ってて,やはりフグの仲間とか書いてありましたが確かな情報ではないようでした.
フグは毒もってたり,膨らんでみたり,子供の時はこんなデカい棘つけてたり,とにかく臆病なのだなあと思ったり.
それで結局泳ぎにくくなってしまっているのだと思うと気の毒...
追記
その後,観音崎自然史博物館の山田和彦さんにセミホウボウと教えていただきました!
気の毒だなんて言ってフグには失礼しました.

20日
前日にハマナタマメを観察に行った時に花に来ていたハチを紹介しました.
ハマナタマメは花が普通のマメ科と逆さまなので,ハチの方も逆さまになってアクロバティックに対応していました.
そしてその状態でハチの腹部にうまい具合に花粉が付く仕組みになってました.
ハチの種類はハキリバチの仲間のようで,スミスハキリバチというのに似ていましたが,自信はありません.
昆虫の同定は本当に難しいですね.

写真:海面を漂う海藻かなにかのように擬態している魚がいました.上記のセミホウボウと一緒に観音崎自然博物館の山田和彦さんにマツダイと教えていただきました.

写真:海面を漂う海藻かなにかのように擬態している魚がいました.
上記のセミホウボウと一緒に観音崎自然博物館の山田和彦さんにマツダイと教えていただきました.

21日
午前,ちょうど白浜エリアのウミガメ調査を終えたところで同じく白浜は根本で宿をやっている知り合いから連絡が入りました.
根本海岸に産卵上陸してきたウミガメが複雑な岩場の迷路で立ち往生しているところを,宿に泊まっていた方々が発見したという内容でした.
ほんの数時間前に調査で歩いた場所ですが,岩場の隙間に向かう足跡で見逃していたようです.
連絡をもらって現場入りしライフセーバーの皆さんと救出を行いました.
カメは岩の隙間にある深い窪みに溜まった雨水の中に浸かるようにして人に囲まれて困っている様子でした.
それまでに根本海岸を監視している白浜ライフセービングクラブの皆さんが仕事の合間に,あとはOBの人もたまたま沢山来ていたので,救出を試みてくれていました.
結果的には無事に海に帰ってもらうことが出来ました.

その様子はYouTubeにアップしてありますので,こういう事例に出くわした時の対応参考の1例としてご参考にしてください.
毛布やブルーシートなどがあればウミガメ,イルカといった流線型で掴みどころがなく,唯一掴めそうなヒレは重力に対応している地上生物とは違いかなり繊細なものですので,そこを掴んで力をかけると,その生き物にとって大きな負担になってしまいます.
もしそれで気づかずに不具合が生じればせっかく海に帰っても生存に問題が生じるかもしれません.
その点を解決するうえでヒレ足の海の大きな生き物を助ける場合に大きな丈夫なシート状のものがあると動物に負担をかけずに大勢で運べるようになります.
こういった作業は動物による傷害(誤って噛まれる,大きな筋肉を備えたヒレで叩かれるなど)の危険,その他怪我,海に近い現場では海難事故になってしまう可能性もあり,まず最も大切なのは人間側の安全です.
その辺りの情報,知識,配慮が難しい状態で,特に興奮した状態での作業は大変危険ですので,お勧めいたしません.
冷静に客観的に判断する余裕を持てる海と海の動物に知識のある人がいない場合には決して無理をしないでください.
これらはすべて自己責任です.
今回は海での救助者としての訓練を積んできたライフセーバーが手伝ってくれていたので大変心強かったです.


写真:ぎこちなく飛んでいる感じがかわいらしいコチドリの幼鳥.

写真:ぎこちなく飛んでいる感じがかわいらしいコチドリの幼鳥.

ちょうど今シーズンはライフセーバーのOB等にレスキューの対象をヒトだけでなくチドリやウミガメといった海辺の生き物まで広げて考えていったら,ますます活動の幅が広がるんじゃないか?!といった提案をしていたところでした.
なんと言ってもライフセーバーですからね.その名称に動物とヒトを区別する意味は込められていないところの意味がこれから大きくなっていくでしょう.
きっと,遅くとも50年先のサーフセービングはそうなっていると私は考えています.
その流れで考えてみると海上保安庁が海の生き物を護るという事に関わっていくのも時間の問題と言えそうです.
時代がそっちに進んでいます.
海上(生物)保安庁でもあって良いはずです.
むしろ海上保安庁の仕事がそちらに広がった結果としてライフセーバーの仕事もそっちに広がる必然が起きるという流れも考えられます.
いずれにしても,彼らのような仕事を選ぶ人々の心が海で生き物が苦しんでいる姿を放っておけるはずも無いでしょう.

今回,ウミガメの救助に際してお世話になった方々のリンクをご紹介します.

2000年に根本海岸で初めてウミガメの上陸痕跡と卵を偶然発見した時からのご縁です.
根本海岸の目の前に当時,唯一の建物でした.
当時は「牧水亭」という食堂でしたが,もう随分前にコテージ業を始められ,現在大人気の宿となっています.

こちらも現在貸し切りコテージとなっていますが,少し前までは海を眺めながらお茶のできるおしゃれな喫茶店でした.
オーナーの方は絵描きでサーファーという素敵な方です.
いずれも素敵なロケーションとなっていますので,お勧めです!

日体大のライフセービング部がルーツのクラブで,1999年から根本海岸等で監視業務を行っています.
私がウミガメ調査を始めた時期と重なり,何代にも亘って仲良くしてもらっています.
根本海岸は海水浴場としては大変厳しい海ですので,ここで安全を保つのは大変な業務です.
私もつい煩いアドバイスなどさせてもらっていますが,これから先も大変期待しております.
夏の根本海岸に行った時には是非彼らに声をかけてみてください.

写真:結実したグンバイヒルガオに集るカメムシ.

写真:結実したグンバイヒルガオに集るカメムシ.
ヒメジュウジナガカメムシというそうです.

24日
凄まじい暑さの砂浜に広がるグンバイヒルガオの上でヤマジハエトリがホオズキカメムシ(上の写真とは別種)を捕食していました.
ホオズキカメムシはヒルガオ科の害虫だそうなので,ヤマジハエトリはグンバイヒルガオにとっての益虫なのですね.
人間にとっての視点で益虫,害虫と区別しますが,生き物それぞれにとって,特に植物にとっての益虫,害虫という視点でそれぞれの虫を見てみたらいろいろと意識が変わるのではないかと思います. 更には人の場合は不快さで害虫に指定したりもしますが,自然界ではそういう視点は多分ないでしょうね. 植物に確認しないと分からないので多分ですが... しかし,それにしても暑くないんでしょうか?撮影者はシャツが搾れるほどの汗まみれでした.

29日
この日,根本海岸に7/1産卵してあったウミガメ巣の周りに子ガメの死骸が4個体見つかりました.
巣の位置が海に近すぎるので台風で波を浴びたりして,卵の流出などの心配をしていた巣なのです.
目の前が海だというのに,海に辿り着かずに,例えば鳥に突かれたという様子もなく,そこで死んでいるという今まで見た事が無い不思議なケースでした.
脱出穴と思われる穴のそばで逆さまになって死んでいた個体もありました.
いったい何があったのでしょう?
謎が多かった事もあり,久しぶりにそのまま巣内調査を行いました.
巣の外にいた子ガメ死骸×4
巣内にいた子ガメ死骸×6
巣内にいた生存子ガメ×4
子ガメのが半分出ていながら孵化に失敗していた卵×7
未割卵(死んでいるか未発生とみられる)×22
孵化成功卵78+欠片約2個分
卵109個
子ガメ死骸と死亡卵の計×39
巣内はきっちり見ましたが,海岸でもっと遠くへ移動していて死んだ未確認死骸もあるはずですが,とりあえず卵の数から確認できた死んだ子ガメの数を引いて70個体が海に帰った可能性があるという記録になりました.

写真:海の水に触れることもなく死んでしまった子ガメの前ヒレ.この立派なヒレを使って太平洋を泳ぎ渡りたかったでしょうね.

写真:海の水に触れることもなく死んでしまった子ガメの前ヒレ.
この立派なヒレを使って太平洋を泳ぎ渡りたかったでしょうね.

巣内調査は今回のように巣内で弱っている子ガメが衰弱しきっていて,海岸に放しても海に歩いていけないし,海に放しても泳げないという状況に出くわしてからやめました.
そのような場合にどういう対処が適切かと考えると本来的には巣内で淘汰されたはずの個体であるものを救出し弱い遺伝を残してしまうという攪乱を私が行ったことになると言えます.
それは私の調査方針の中で最も避けたい事です,
しかも感情的にも実際的にも生きていけない子ガメの対処は大変な苦痛が伴います.
そう考えると巣を掘ることはタブーなのだと考えるようになりました.
今回,巣の外で子ガメが死んでいるという新たな問題が見当たらなければ巣を掘ることは無かったのですが,結果的に巣から脱出できなかった弱い個体を助けたことになります.
これが正しいこととは思えないのですが,結果的にそう対処するしかなかったという状況です.
子ガメが巣のすぐ近くの地表で死んでいた理由は結局巣を掘っても確かめられませんでした.
余計なことをしたのかもしれません.

母ウミガメの救出もあり,今回は子ガメの対応と,いずれも神経が疲れるような緊張感があります.
自分が関わることで生き物に問題が起きるようであるならば関わらない方が良い訳なのです.
その彼らの様子を手を下さずに死んでしまう状況まで含めて見守るしかないといった場面もあり得るわけで,そういうものまで受け入れられるような精神力と体力が必要になると感じました.
例えば動かせない巨大なクジラが生きたまま打ちあがった時などはそういう状況ですし,今回や以前生存イルカが漂着し救出した時も人に接することがその動物にとって恐怖でしかないという事を救出しようとしている側は忘れがちです.
少なくとも彼らの視界に入らずに体に負担をかけずに,理想的には「なんでか分からないけれど,たまたま海に戻れた」と動物が感じるような感じで救出してあげられればベターでしょう.
もちろん難しい事ですが.
そんな感じで,生き物に接するというのは本当に難しい事だと強く感じた8月でした.

写真:夏ならではの海の色

写真:夏ならではの海の色



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