2023年6月の出来事



写真:この時期には珍しく同じ海岸で幾度もミサゴを観察しました.
多分同じ個体です.

今月もTwitter投稿より引用し追記します.
投稿日が投稿内容の観察日ではない場合もあります.

1日
今日は2023年度ウミガメ産卵調査の初日でした.
漂着物がいろいろ打ちあがっていました.
あとシロチドリの雛が2羽が確認できました.
しばらく見に行っていなかったのですけど,ちゃんと大きくなっていました!
その他に種が不明のウミガメ漂着情報が日本ウミガメ協議会から連絡が来て外房方面へ確認しに行ったりもしました.
甲長62cmのアカウミガメでした.
日本ウミガメ協議会には毎年自身が記録した漂着を報告していますが,向こうから幻聴調査依頼が来たのは初めてでした.
いろいろな分野で人手不足があるような感じがしました.
当日のTwitter投稿

2日
先日の漂着ミンククジラ調査現場で取材に来られていた映画監督の角洋介さん制作の短編映画をネットで発見し,拝見したところ金谷フェリーが題材になっていて館山というてワードも出て来て,景色もお馴染みで嬉しかったのでご紹介させていただきました!
ブログを書いている今はもう7月の後半なのですが,更に興味深い映画が完成するそうです.
楽しみで仕方ありません!!
公開されたら,ここやSNSでご紹介いたします.
「たまには船にでも乗ろうか」監督 角洋介 Gene Theater
当日のTwitter投稿


写真:海浜植生の中に隠れているコチドリの雛.
海浜植物や漂着物は雛が天敵のカラスなどから隠れるためにとても大切です.

3日
台風一過の海岸ではシロチドリの親子とまだ巣のない求愛中のツガイが見られました.
コチドリは複数確認.
大潮と台風の高潮が重なり,植生のある辺りまで波が寄せる状態が続いている中,まだ飛べない雛は植生の奥で静かにしていました.
大波が来ても飛んで回避できないから慎重なのでしょう.
もしも雛が大波でさらわれてしまったら,どうなってしまうのでしょう.
以前,海岸に流れ込む小川を渡ろうとした生まれて間もない雛が足が届かない深さのところに来て身体が浮いてしまい,ス~っと海の方へ流されてしまった場面を見たことがあります.
この時は浅瀬でまた歩き出しましたが,水量が多い場合,そのまま海に出てしまい,しかし足ヒレも無い小さな身体では岸に戻る事も出来ないだろうと想像して心配にしなりました.

この日は台風が去って間もない状況の中で海岸の整地も始まっていました.
この海岸は重機で均されることが例年行われていて,海藻の除去なども重機で行われる場所なのですが,上記のようにシロチドリやコチドリの卵があり,雛が自由に歩き回る海岸でもあります.
更にアカウミガメの産卵地ですから,私が6-8月の毎日調査で記録してはいるものの,気づけなかった上陸痕跡があって場所が確認できていないウミガメの巣(卵)がある可能性が十分にあります.
そういう希少な生き物の繁殖地である海岸で繁殖シーズンに海岸に大規模に手が入る事にこの20年,毎年心配をしてきました.
そこで,今回以下のような投票を行ってみました.
「シロチドリとコチドリ,そしてウミガメが繁殖に利用しているこの海岸が夏にはキャンプ場になって全面的に人間が利用してしまうという,しかも今年はライブイベントも行われます.
ちなみに千葉県では全て絶滅危惧種です.
客観的にこの海岸の利用の仕方,どう思われますか?
」という問いと共に4択でお答え頂き,思った以上に沢山の反応を頂きました.
この記事の11日の分に票の結果を掲載しています.


写真:20日,根本海岸でコチドリの巣を発見しました.
コチドリも千葉県ではシロチドリと同じレベルの絶滅危惧指定がされています.

この時に投稿した写真はTwitter上でご確認いただけますが以下のような写真で状況イメージとなっています.
1枚目:シロチドリの雛×2と母鳥
2枚目:コチドリのツガイとシロチドリのツガイのケンカ(広大なのに営巣適地が少ない?)
3枚目:写真奥の海岸中心部で重機数台とダンプ数台で砂を移動し均しています.植生が踏まれ雛や卵が踏まれる心配が毎年あります
4枚目:シロチドリのオスが求愛行動をした痕跡
当日のTwitter投稿

6日
投票思った以上に増えてきました.
参考になります、ありがとうございます.
強調しておきたいのは現場で作業されている人が悪いのではないという点です.
管理をすべき県や市が生物の生息状況を把握して管理指導を行うべきと感じています.
当日のTwitter投稿

5日
館山市で6月19日,20日と松林に農薬のヘリ散布が行われます.
平砂浦沿いのドライブ,特にランナー,サイクリストは特にご注意ください.
しばらくはそれらが海に流れ出すでしょうからサーファーも心配です.
松に農薬が付着している点もご注意ください.
その他の海岸線の松林も南房総市含め順次行われますので,気になる方はそれぞれ役所か張り紙の電話番号に問い合わせをお勧めします.
観光地である南房総の海岸線でこのような薬品が大量に空中から散布されることが毎年行われていますが,他所から来られる方には全く周知する手段がありませんし,行われていません.
化学物質過敏症といった体質の方がいる事を配慮すれば当然散布時には近隣の宿泊施設や道路は使用禁止か予め告知したうえで自己判断での使用といった流れにしなければ危険でしょう.
特に過敏症の方でなくてもペット,幼少のお子様,含め健常の方でも安全なものではありません.
この辺りです(Google map)
当日のTwitter投稿


写真:ウズラシギと思われる初見のシギを見ました.
山側に逃げていくというのが他のシギと違う反応で,その後小川で水を飲んでいました.

5日
今日は館山市の太平洋岸,延長約5㎞の平砂浦海岸のウミガメ産卵調査の日でした.
平砂浦は6-8月の間の大潮時に一度,つまり6回しか調査できませんが,しないでいるよりはした方が,少なくとも「まだウミガメが産卵に来ている」という意味での記録は残せるため続けています.
またこの海岸ではほぼ光害が無いため,光害の影響の多い白浜エリアとの対比という意味もあります.
長い海岸線ですので,大潮時に波打ち際を自転車で走りながら調査するという方法でやっています.
この日も様々な漂着物を見ながら自転車で移動していると,なんだか妙な形の大きな漂着物発見.
なんとなくこの曲線と断面が,飛行機?という感じがしたので,写真を撮っておき,帰ってから千葉県の出先機関の安房土木事務所に連絡したところ,他からも連絡があって既に片づけに行っているとのことでした.
なんだか気になりますね.
当日のTwitter投稿

追記:ニュースを検索したところ似たようなものが沖縄でも漂着していました.
これと同じものだったりしないでしょうか?
黒潮に流されて更に下流に?
当日のTwitter投稿

7日
今回もホームページ( http://6dorsals.com )内とBlogger https://6dorsals.blogspot.com )で掲載している毎月1回更新のブログを読んでご紹介させていただきます.
どうぞよろしくお願いいたします.
Spotify
当日のTwitter投稿


写真:シロチドリはサーファーやカヤッカーには身近な存在なはずですが,気付いている人はほとんどいないように見えます.

9日
今日はウミガメ産卵調査中に偶然,混獲ウミガメ放流の現場に遭遇しました.
漂着ウミガメ等を調査しているNPOエバーラスティングネーチャー(ELNA)の皆さんでした.
甲羅の上に発信機を付けて海に帰っていく姿を皆でお話ししながら眺めていました.
自分の調査ではないから気が楽で落ち着いて見ることができたからか?やや小さめの個体だったからか?海に帰る姿を見ながら「アカウミガメってかわいいなあ」と呑気な事を思ってしまいました.
頑張って生きぬいてほしいです.
ELNA Twitter
当日のTwitter投稿

11日
南房総市のシロチドリ,コチドリ,アカウミガメ繁殖地の海岸利用についての投票が,期間としていた1週間が経ち昨夜終了いたしました.
252票が投票され,結果は以下のようになりました.
投票下さった皆様,リツイート,いいね下さった皆様,本当にありがとうございました!
252の投票を頂き,結果は以下のようになりました.

「人の利用を制限すべき」59.1%
「両立が図れるならそこを目指す」24.6%
「繁殖シーズンに海岸の整地の為に重機を入れる(のは)問題」15.1%
「人の利用が最優先」1.2%


写真:重機で均されて一変した海岸に立つシロチドリの雛.

今までウミガメについては現地を調べている者として現場対応,状況調整してきましたが,個人が希少生物の繁殖について判断をしていた間違いを感じ,今年からは県が希少生物の繁殖地の利用について直接現場対応をするよう要望し,私は状況を記録するのみで現場で意見,要望は伝えない方針としました.
そしてチドリに関しては,以前,千葉県要保護生物指定のコチドリ,その後再び,千葉県重要保護生物指定されているシロチドリの巣が失われる状況が発生した時に,役所及び,県にまで問い合わせて,初めて現場の作業が止められるという状況になって,これ以上は個人では対応できないと感じたのがきっかけです.
そもそも,もっと早くから,ウミガメに関しては20年以上の調査ですから,早くにそうしておけば良かったのだと反省しています.
ウミガメのように巣のひとつひとつで柵を作って保護するといった方法は警戒心の強い親がいるチドリでは使えない方法ですし,雛は自由に海岸を利用して育つものです.
そのような場所として海岸があり,人も利用しているのですが,その優先度は希少生物にあります.
シロチドリについては重要な保護生物で,実際に内房を南房総から富津まで見渡しても大した数が見られないような鳥です.
繁殖に適した海岸はかなり少ないのです.

チドリの繁殖に適している海岸だとしても,5-6月に多く行われる海岸清掃などで卵や雛に害が及んでいる可能性もあります.
そのような場所で産卵をひとつひとつ確認し保護したり監視したりすることを県が怠って,私のような個人が20年も続けている状況です.
少なくともウミガメに関しては産卵数の報告が公開されています.
県は当然それを把握して,それに対応しているべき段階ですが,繁殖地の環境改変を許可しながら監督する事もありません.
ですから,もっと早くにやっておくべきでしたが,今回要望を伝えてみます.
今回,投票頂いた結果は過去の経緯と共に県への要望に加えます.
県が私(たち)の問いかけに,どのような反応をするのか分かりませんが,南房総でもそろそろ環境について配慮した利用について進めていく時代と考えています.
ほんの少し今回で前進できればと期待しています.
ご協力,本当にありがとうございました.


写真:カタクチイワシを沢山咥えて満足そうなハシブトガラス.

20日
6/14に千葉県生物多様性センターに現状,要望をメール.6/20まで返信無く、電話にて問い合わせ.メール確認済みとのこと.
絶滅危惧種ということでの保護は出来ないが鳥を殺すのは違法なので、その点について対応可能な環境生活部自然保護課狩猟・保護班へメール転送とのことで,そちらからの返信待ち.
本日この海岸で新たにコチドリの巣(卵4個)が見つかったことも伝え、対応を急ぐようお願いしました.
しかし、改めて「絶滅危惧種だという理由では保護することが出来ない」という言葉を聞いて、分かってはいましたが、なんて凄まじい矛盾なんだろうと呆れました.
鳥獣保護法だけが唯一の盾という...
ご参考 千葉県環境生活部自然保護課 生物多様性センターホームページ
当日のTwitter投稿

21日
本日,千葉県庁自然保護課 狩猟・保護班からメールが届きました.
『南房総市根本海岸で繁殖するシロチドリ,コチドリに関して、鳥獣保護管理法に関して当該海岸周辺は「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」(通称、鳥獣保護管理法)の鳥獣保護区となっており、狩猟は禁止.
また、野生鳥獣の捕獲や殺傷、鳥類の卵の採取・損傷するには許可が必要となります.※アカウミガメは鳥獣保護管理法の対象鳥獣には含まれません。』(要約)とのことでした.
これでは鳥が死んでから警察に通報する以外に出来る事が無いので,予防的な方策を取るために役立つ方法は無いか?と,もし運営側がチドリの捕殺許可を取るとしたらレクリエーションの為に許可が下りる可能性があるのかについて電話で訊いてみました.
シロチドリは鳥獣保護管理法規則の中で第一条の二 法第二条第四項の環境省令で定める鳥獣(希少鳥獣)に指定されているので,県ではなく環境省の許可を取らなければ殺す事,捕獲する事などはできない種とのことで簡単に許可が下りることは無いようなので,とりあえずは安心しました.また予防的な方法を取るために後ろ盾となる法令は無いとのことでした.
とにかく,絶滅危惧種という言葉はこういう事例では全く役に立たないものだと再確認しましたが,希少種はやはりここでも守られているのは確認できました.
しかし鳥が死んでから罰則を与えても意味がなく,「そういう事が起きないように対処してほしい」と言いたいところでしたが…
少なくとも市には海岸の工事の時期を今回の種に対して配慮する方向でお願いをしてくれたそうなので,とりあえずそこまででも収穫と考える事にします.
あとひとつ,個人が県などにこういう件について要望したり打診したりする例はどのくらいあるのか?と,そういう窓口がインターネット上に設置してあるのかについても訊いてみたところ,やはりあまり無いそうで,ネット上にもそういう場所は無いようでした.
生物を観察している個人が現場で起きている事を県などと共有し問題を解決する為の意見を受け入れる場所を作っていかないと,情報が足りていない状況で生物多様性を保つという事は難しいと感じました.
千葉県への打診については以上ですが現場はこれからが大変なので,しっかり記録したいと思います.
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写真:ハマナタマメに集まるアリたち.
ハマナタマメから蜜をもらいに通う事でハマナタマメは食害から免れるという共生関係だそうです.

20日
スカシユリ咲き始めています!
南房総夏の風物詩です.
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22日
先日見かけた食いしん坊カラス.
エトピリカのようにいくつもカタクチイワシを咥えていました.
当日のTwitter投稿

27日
今日,根本海岸に干からびたウミガメの卵が複数転がっていました.
全て中身があり,小さな生き物が中身を食べている状態.
昨年のものとは思えないので,調査前の5月に産んだものと思います.
さて,なんで卵が出てきてしまったのか?
現時点では干からびていますが,河口なので,大雨の時に川の脇に産んであった巣から流れ出た?
6月の初めから中ごろまで海岸の砂を移動する作業が行われていたので,その際に巣の表面が削がれたか,巣ごと掘り返されて砂に混じって川のそばにあったものが,やはり大雨の時に流れ出たのか?
巣の位置は確認できませんでした.
チドリの繁殖状況の問題もあり,来年からは5月から調査を始めるようと決めたので,来年はこういう事が無いようにしたいと思います.
12か月のうち4か月調査だと生活がもつか?というレベルになりそうですが,ウミガメもチドリも追い詰められてますので.
根本キャンプ場はこういう生き物の犠牲の上に成り立っているキャンプ場となってしまっています.
本来,ウミガメやチドリの繁殖地として保護区にしても良いはずの貴重な場所です.
私はキャンプ場は海岸道路山側へ移転すべきと考えています.
そして限定エリアで遊泳だけを可能とすれば両立可能です.
当日のTwitter投稿


写真:海岸に転がっていたウミガメの卵を集めて撮影.

追記:千葉県への打診についてはその後に知り合いの方が働きかけをしてくださって,少し進展がありました.
少しずつでも前に進んでいる感じですので希望を持っています.
また続報を来月にでもお伝え出来たらと思っています.
皆さんも生物多様性を保つための実際的な局面に出逢った時には県や市などに対応を求めてください.
何もしてくれない(できない)実情を今回お伝えしましたが,その要望を伝える事でしか変わっていかないと思います.
要望があるのに無視し続けていては彼らの存在意味さえ失ってしまうはずです.
そういう働きかけは団体がするものという印象がありますが,それも問題だと思います.
個人個人が遭遇した実際の状況が集約されて,それら多様な状況に,今は対応しきれないとしても,将来的に十分に対応できるようにすることを目指す義務が国や県にはあるはずです.
生物の多様性を維持すると言うならば,まずその多様な状況に柔軟に対応できるようにすることが必要です.
それなくして絶滅危惧種指定や生物多様性といった言葉の乱用は意味が無いと思います.
生き物にとって良い未来は結果的にヒトにも良い未来なはずです.


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