2023年4月の出来事




写真:砂浜でアリジゴクを見たのは初めてでした.しかも蟻地獄がなく砂の表面に...

今月のTwitter投稿より引用し追記します.
投稿日が投稿内容の観察日ではない場合もあります.

2日
先日海岸で見つけたアリジゴク.
海岸で巣を見た記憶があまりないのですが,普通にいるんですね.
種類を調べてみたら海岸にもいるカスリウスバカゲロウかコカスリウスバカゲロウに似てるようで,だとすると砂地表面下で餌を待ち伏せする非営巣性とのこと,なるほど「蟻の地獄」が無い訳なのですね.

3日
九十九里の南端近くでカズハゴンドウというイルカが多数漂着しました.
過去には幾度か同じカズハゴンドウの多数漂着現場に行ったのですが,イルカが苦しそうにしてる姿を見るのは何回見ても辛いですね.
今回のは夕方まで知らずにいました.
当日は予定が空いていて行けたはずだったので残念でした.
ご参考に2006年の現場などについて書いてあるカヤック日記を貼っておきます.
この時は国立科学博物館の山田 格先生と相談し,港に放した個体をカヤッカーとサーファーで港から出す作業なども試みたりしました.

5日
シロチドリの卵を今年初めて確認しました.
なんだかいつまでも涼しいので大丈夫なのかな?と勝手に少し心配しています.
あとはゴールデンウィークの人の出入りが心配です.
抱卵期間が25日間前後なので,GW中に雛がちょうど孵るというタイミングになりそうです.
記録の為,一度だけ巣に接近し卵を近接撮影しています.


写真:忙しそうに海岸を飛び回るコチドリたち.

5日
今回も ホームページ 内と Blogger )で掲載している毎月1回更新のブログを読んでご紹介させていただきます.
写真も見ていただく場合は Blogger がおすすめです.

10日
館山港の自衛隊前から市街方向を望むと,以前は新井海岸,北条海岸,八幡海岸から那古の海水浴場までの館山市街に広がる砂浜海岸を一望できたのですが,現在では写真のように無駄にデカい桟橋が全部覆ってしまうようになってしまいました.
観光地としての景観の大切さを忘れて,昔から変わらぬ館山の海辺を求めてやってくる人たちの気持ちを考えることもなく,大型構造物を造り景観を変化させることが静かに気づきにくい形で多くのものを失っていく事に繋がるという事を感じます.
写真を撮ったこのくらいの距離で客観的に眺める事で,そういう大切な景観を失ってまで得られたものが本当に必要なものなのか?また市全体,または市民全体の為になっているのか?を考えさせられます.
この写真を撮る時には「せめても」と思い,市街の建物は比較的古いものだけになるように切り取ってみました.
あのデカい桟橋が出来る前には,お隣富浦の原岡桟橋のような素朴な桟橋があった事を知る人も少なくなってしまったのでしょうか?
本当にもったいないことをしました.


写真:久しぶりにムナグロに逢いました.海藻が山ほど漂着している中を忙しそうに餌探ししていました.人が嫌がるこのようなものも彼らには貴重な場所なのです.

館山の桟橋が大切にされなかった分が,お隣の富浦での原岡桟橋需要の増加を生んでいます.
神奈川や九十九里とも違う本物の自然海岸が残っていて,海辺独特の静かさが今もあり,その素朴さが他では,少なくとも関東では到底得られないようなレベルの海岸が館山,南房総にはまだ沢山見られます.
私自身が30年前に移住した者ですからよく分かるのですが,その当時でさえ,そう感じたのです.
そのような,人が作ろうとして造れないものを求めて遠くからわざわざ南房総に来る多くの人々,そして移住さえしてしまう人たちの気持ちを分かってあげられない方々の古い思考に従っていたら館山はダメになってしまいます.
これらの写真に写っている,少なくとも私が知っている30年前からある,当時の館山では高層と感じられたマンションなども,それ以前の松林の景観が広がっていた時代と比べてみれば,その時代にも多くのものが失われたのだろうと想像できます.
次は何を失うのでしょうか?それらを取り戻す方向に舵を切ることも出来るはずです.

この桟橋も老朽化します.
その時に思い切って撤去してみるという事を今から計画してみても良いと思います.
不要なものをリセットする事で得られるものがある時代が近づいていると考えています.
実際,既にこの30年で海水浴場はいくつも閉鎖されましたし,2019年の台風以降には個人の家々は随分と減り,そしてそれらの更地に物凄い勢いで家が建てられています.
過激にも見える新築ラッシュは定住者が増える方向ではないですし,一過性のブームであることは間違いなく,また30年後になってみれば,そもそもそれほど長く使う前提で建てられていない建物が多く,それらは解体されることもなく,廃墟や安全な居住に適さない状態で中古で安く販売されセカンドオーナーに利用されている姿が想像できます.
市の方は市街の海岸線を今になって神奈川に追い付こうとしているかのように「近代化」したりして,その衰退を分かりにくくしているだけで,実際には全て縮小に向かっているのですし,それら見かけの少ない利益と人口の減少の状況を考えれば維持する負担を負いきれなくなる時が来るでしょう.
その時の状況の荒れ方を想像してみると館山の未来はなかなか侘しいものとなりそうです.


写真:根本海岸.
関東にあって,このような広大な海浜植生に満たされた砂丘があること自体奇跡のようなものですから,県や市はその利用について十分に注意を払うべきです.

ただし,そのような中でも,もし自然が残され,海岸にチドリが飛来し,ウミガメが産卵し,海浜植生で満たされた砂丘が広がるような美しい海岸線が残っていたならば,館山の価値は変わらないはずです.
館山に目を向ける人のタイプが変わっていくだけで,むしろ需要総数は増えるかもしれません.
今でも自然を求めて館山に訪れる人は多数いますが,本当にどっぷりとそれを生きる楽しみとしているような人は人が造った施設には興味が薄いので目立たない存在となっているだけです.
そういうタイプの人は移住を含めて真剣にその土地と向き合って自分事として,その町の姿や未来について考えるでしょうから,結果的に刹那的な利用に走らず町も自然も大切にしてくれる存在となります.
そういう人が増えていく傾向が進めば,人口が減り,寂しさを感じさせるような中に本物の自然が身近にあるという環境が,とても大きな需要を生み出し,結果的にまた人口が増えてしまうかもしれません.
それでは困るわけではないですが,おかしなぶーむになってしまうような事さえなければ,多分きっとちょうど良いくらいな規模で落ち着くだろうと思います.
ですから結局のところ,人は減っていき,経済を基準にした物事の良し悪しについての判断は意味のないものとなり,最後には豊かな自然が本当に残されているかという事がその土地の「価値」となるはずです.
自然さえ残っていれば,そこにはまだ未来があり,ヒトがそこで生きていく事が出来る場所であるはずなのです.
人口が少なく,店は無く,老人ばかりとなった近い未来(現在も既にそうなのですが)の館山にあって,それでもまだ人が館山に価値を感じてくれる対象として本物の自然が残されていれば,まだその先の,今現在では想像もしきれないような未来にさえ可能性があるはずです.

今現在,その本物の自然を破壊する事で「経済を良く」しようという古めかしい発想を今からやめなければ,その未来の可能性は残されないというところに来ています.
そしてなによりもまずすぐに止めなければならないのは自然を守ると言いながら自然を改変するという活動です.
この悪い効果は非常に速い速度で進行していますが,後になって元に戻すのには時間がかかりそうです.
これの悪いところは善意を前提にしているところです.
経済を動かすことに必死な人が,優しい心を持つ従順な人々を利用して進める環境破壊は目立ちませんが人海戦術的に進んでいます.
「地獄への道は、善意で舗装されている」という例のひとつだと思います.
目の前の「良い事」を考える時に,もっと見渡して俯瞰して,数十年というスパンで長期的に考え,本当に良い事かについて自分で考える事を忘れてしまうと後で自分が参加して行ったことが,近い将来に自分では想像できなかった事態を招くかもしれません.
それを実際に目にする時にはもう手遅れかもしれません.
その時にはもう自分は死んでいるだろうから構わないというような発想の人がそういうものを牽引していないでしょうか?
それぞれが自分の参加する活動に十分に想像を巡らせ,客観的に,長期的な視点を持って意思を示す事が大切です.


写真:原岡桟橋の駐車場で観光客を美しい囀りで出迎えるのに忙しいイソヒヨドリ.
一昔前の簡素な桟橋が観光資源となった富浦は館山に比べ海岸の自然度が高く,生き物の観察やビーチコーミング同時にも楽しめます.

12日
今日南房総市東京湾岸に打ちあがったクジラですが,報道にあったザトウクジラではなく,その他のヒゲクジラでした.
分かりやすい特徴としてはザトウクジラの長く特徴的な形のヒレではありませんでした.
ただ何クジラなのかは私では分かりません...
ヒゲクジラの種を判断するのは意外と簡単ではないのです.
千葉日報の記事 には「ニタリクジラと見られ」とありました.

14日
少し風と波のある海でカヤックを漕いでいる時の前方の様子をウェアラブルカメラで撮影した動画をアップしました.
シーカヤックは海が穏やかな時の遊びと思われてる面があるかもしれないのですが,経験を積んでいくと実際に漕いで楽しいのはこんな感じの海面なのです.
自転車で例えるとマウンテンバイク.
もちろんベタ凪の海面も気持ち良いですし,もっと波やうねりのある海面の方がスリリングで楽しいというカヤッカーもいるでしょう.
つまりマウンテンバイクでなら舗装路からジャンプ台も楽しめちゃうという感じですね.
もちろん技量や経験に合った海況を選ぶことが大切です.
ツアーは参加者のレベルに合わせて無理なく実施していますのでご心配なくどうぞ.
マウンテンバイクを走らせる地面と違い,カヤックを走らせる海面というフィールドは同じ場所でも様々な条件で楽しめてしまうというところが奥の深さであり,それを可能とするシーカヤックの能力(包容力?)の高さが飽きずに長年楽しめる理由なのです.


写真:飲み込めるのかな?と思うような大きな丸い濃い色の,恐らく植物質のものを食べたシロチドリの親.
潮間帯で小生物を採餌しているものと思っていましたが意外でした.

15日
先日海面で見かけたユウレイクラゲと思われる大型クラゲですが,写真をちょっと過剰気味に加工してみたところ触手の密度や長さ,共生している魚たちの姿が見やすくなりました.
画としてはやり過ぎでも,記録としては情報量が増えるので,こういう加工が簡単に出来る時代になって本当に便利で助かっています.
時代の変化という点で考えるとカヤックでの撮影という点も,カメラが小型化,デジタル化,高性能化したことで,水に入れて片手で操作でき,被写体との距離も考えずにオートフォーカスが可能,超高感度,フレーミングも適当でとりあえず押さえておけば,後でパソコンで簡単加工とか,ほんの四半世紀でこれだけの状況になるなんて想像を超えています.
これらを対比したカメラはニコノスVというニコンのフィルム全天候型のカメラですので,それは差があるはずです.
ニコノスの頃は,水中で撮影する場合はまず水中メガネを付けてカヤックを転覆状態にして逆さまになって撮影していました.
エスキモーロール必須でした.
被写体との距離も水面で予想して設定してから.
それでボツ写真多数という,いちかばちか撮影でしたが,イルカのお陰で大変鍛えられました.
ここの ハンドウイルカのページ などに当時水中で撮ったイルカの写真が少しだけあります.
他にはカヤック日記の方に2004年以前はいくらかあります.

15日
カヤック日記更新致しました.
Bloggerにも掲載してあります.
スマホで表示に不具合がある場合は横画面でお願いします.
写真:単独で採餌中だったミユビシギです.

17日
この日の漂着物.
海面を漂流する生活を送っていたアサガオガイの殻の上にエボシガイ,ウミウシの仲間?,何かの卵がびっしりと暮らしていました.
ノアの箱舟状態です.
ただしこの箱舟は漂着と共に全てが死んでしまいますが.
軟体部がすっかりなくなったやや大きめのカツオノカンムリも多数打ちあがっていました.
そしてアサガオガイと同じ何かの卵が多数付着していました.
あとはアオミノウミウシの体の一部らしきものも付いていました.
その後,いろいろ調べてみたところこの青いアオミノウミウシの部位に見えていたものが,アサガオガイに付いていた茶色のウミウシの仲間と同じものだと後で,分かりました.
ヒダミノウミウシという種類で,食べるものによって色が違うという驚きの情報がありました.
アサガオガイの方ではエボシガイを食べて,カツオノカンムリではカツオノカンムリの体を食べていたのでそれぞれ食べ物の色合いになったという事のようです.
これはつまり食べ物に付着して暮らす中で体の色が同じになるという事で擬態の効果もあるのだと分かります.
更に,恐らく付着していた卵もこのヒダミノウミウシのもののようです.
今まで気づかずにいた事がまだまだあって,一生勉強という事を改めて感じました.
フィールドで出逢う生き物の数限りない世界で勉強し続けられる事の幸せも感じました.
参考


写真:カツオノカンムリに付着していたヒダミノウミウシと思われる青い小さなウミウシ.(スケール1メモリ1㎜)

19日
前の日ですが,今年初めてのシロチドリの雛を確認しました.
4月5日に発見した卵との距離が数百メートルで,卵も親鳥も見当たらなかったので,この雛とツガイが同一の親子と思います.
GWに孵化だったら困るなあと思っていたので,少し安心しましたが,雛が1羽しか見られず気になります.
あと珍しかったのは雛がいる段階で親鳥が交尾をしていました.
この段階で交尾すると今の雛がどうなるのか?気になります.
まだまだ勉強不足です.

20日
今日はあまりちょいちょい観察に行くことが出来ない,少し遠い場所(と言っても内房ですが)でシロチドリの繁殖をチェックしてきました.
ツガイ2組を確認.
ひと組は雛を3羽連れていました.
雛を連れていたオスが植生の中で見つけた何かを一瞬で飲み込みました.
結構大きめの黒っぽいもので動物質ではないように見えました.
何だったのかとても気になっています.

23日
3日前に確認したシロチドリ雛×1の無事を再確認し,新たにコチドリの巣発見.
白っぽい卵があり珍しかったです.
その他,キョウジョシギ×1,メダイチドリ×1も目視(遠くて写真なし)
海岸が賑やかになってきました.
それにしてもやけに涼しい日でした.
今年は涼しすぎるようにも感じますが,気象庁のサイトで平均気温を調べてみると50年ほど前はもう少し低い気温が普通でした.
気候の方が狂ったのではなく,季節に対する感覚の方が狂ってきてしまっているのかもしれないと感じました.


写真:かなり珍しいという幻日環を初めて見ました.白い円状の線がそれです.(本文に詳細あります)

25日
オオミズナギドリのお陰で晩飯ゲットしました.
海面に物凄い数の鳥が飛んでいたら,それは多分カタクチイワシの群れを発見したオオミズナギドリです.
彼らは水中に潜って魚を捕獲します.
そして海中の下からは大型の肉食魚に追われ,行き場を失ったイワシの一部は岸に乗りあげてしまいます.
今回は稀に見る量で漂着しており,しかも岩場の隙間だったのでイワシの漂着に気づいている人が少なかった事もあり,取り放題でしたが,晩御飯にふたりで食べきれる程度の量だけを頂いてきました.
ありがたい事です.

25日
そういえば昨日,南房総市で幻日環を見ました.
幻日環を説明するのは私では難しいので興味のある方はこちらのサイト等で見てみてください→ 科学する空
つまり太陽の光に大気中の物質により光が変化して現れる現象です.
昔はこういうものは極地で見るものと思っていましたが,近年見る事が増えてきたように感じていますが,幻日環も見れるとは驚きました.
太陽活動の活発化の影響でオーロラも低緯度で観察されるケースが増えているという事ですので,そのうち南房総でさえ見れてしまうのではないかと密かに期待していたりします.
初めてだったのと,ネットなどの写真で見たような低い位置の太陽にできた状態では無かったので,違うものかな?と思いましたが,そうですよね?
14:30頃撮影.

27日
ユリカモメが北に帰っていきます.
まだ夏にもなっていないのに顔が真っ黒(別に日焼けしたわけではありませんよ)


写真:岩井に打ちあがったクジラ.



お知らせ


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