2023年1月の出来事


写真:海岸沿いの茂みで過ごすジョウビタキ.

今月もTwitter投稿より引用し追記します.
投稿日が投稿内容の観察日ではない場合もあります.

1日
今年もどうぞよろしくお願いいたします.
カヤック日記の中では先月にご挨拶してありますが,Twitter上では元旦の投稿でしたので年賀状を貼りました.
年賀状という習慣が紙からネットに移行して残るかなと思っていましたが,まだ移行段階から抜けきらないようで,お客様に送る紙の年賀状もどうするのが良いのか迷っています.
逆にご迷惑になる場合もあるでしょうから,もしご不要という方がいらっしゃいましたら,遠慮なくお申し出ください.

4日
今日はミサゴを4羽も見ました.
岩の上で魚を食べている個体が飛ぶのを待っていたら,もう1羽が大きな魚を持って登場しました(写真の個体).
この個体はどこか落ち着く場所でじっくり魚を食べるつもりらしく,上昇気流を探して山の斜面近くへ行き,旋回しながら気流に乗って150mくらいまで上昇していきました.
その上昇気流にはトビが数羽先に乗っていた為,魚に目を付けられて高空で追いかけられていましたが,無事に逃げ切って見えなくなりました.
ミサゴ寿司の由来になった時化の間のための保存が目的の場合に山に向かうのでしょうか?
保存場所でトビやカラスに食べられちゃわないのかな?と思ったりしました.
この間,後から来た個体を観察していましたが,最初に観察していた岩の上の個体はまだ魚を食べていました.



写真:城山から見た館山市街の海岸線.

5日
館山湾も東京湾の一部ですが,水は想像以上に澄んでいます.
館山湾の奥の市街地に近い浅場では海が荒れると海底が掻き混ぜられて,気持ちの悪い変な色になっているうえに臭いもなかなかという時代がありましたが,近年はだいぶんきれいになったようです.
それでも水質と混雑が気になってツアーで館山市街の海岸線をご案内する事は少ないのですが.
奥まった湾の最奥に大きな川がふたつ流れ込んでいますし,川にはいろいろなものがまだ垂れ流されていますから,この程度でも良い方でしょう.
館山湾の中の鏡ケ浦の入り口となる南側の沖ノ島と北側の大房岬辺りまで行くとTwitterに投稿したようなきれいな海水が見られます.
特に冬はプランクトンの密度も下がりますから,澄んだ水が好きな方は冬にカヤックに乗ってみたり,ビーチコーミングをしてみたりするのがお勧めです.
寒い日もありますが,南房総の寒さは大したことがありませんから,しっかり着込んで冬の海を楽しんでみてください.

6日
この日は三宅島と御蔵島が良く見えました.
ひとつの島に見えますけれど右の山頂が三宅島,左が御蔵島なのです.
千葉県南端辺りからだと御蔵島山頂までの距離は約120㎞.
意外と近いので,2000年の三宅島噴火の後には噴煙もよく見えていました.
最初の噴火を見たのは沖にイルカを探している時でした.
その日は水平線近くが霞んでいて島が見えなかったのですが,海面と直角に立ち上がる真っすぐな雲を見ておかしな雲だなあと思っていました.
帰ってニュースで見分け島の噴火を知り,驚きました.
前年に御蔵島にイルカを見に行った時に立ち寄ったばかりでしたから,三宅,御蔵を急速に身近に感じていた時期でしたので大変心配しました.



写真:南房総南岸から見た御蔵島と三宅島.

そして御蔵島から引っ越してきたミナミハンドウイルカたちが暮らしていた海が手前に写っている海です.
噴火の迫った時期にイルカが数頭も御蔵の海域から脱出して南房総に居ついたという流れですので,場合によっては噴火との因果関係が話題になる可能性もあったかもしれませんが,南房総に引っ越してきたイルカの存在自体がそれほど有名にならずに終わったので騒ぎにならずに済んだのかもしれません.
まあでも,もしかすると海底の地下深くでマグマの動きで発せられる音などに特に敏感な個体が御蔵の海岸線から離れていったという例外的なケースだったのかもしれないと考えておいても良いかもしれません.
なにしろイルカに訊かなければ分からないのですから.
ただ御蔵島から脱出して新天地に暮らそうとする個体はその後幾頭も確認されていますので,その他の理由があって,しかし,その個体毎の島を出ていく理由はそれぞれかもしれず,一括りに出来るものではないと思います.
ヒトでは引っ越しをする場合に「なんとなく」というのはあまりないと思いますが,イルカにはあるのかもしれません.
「なんで?」って訊かれてもねえ~という感じで旅に出るのが普通かもしれないですし.
ヒトはどうしても人の考えられる範囲で合理的に理由を求めたくなってしまいますけれど,イルカの世界の合理のなかでヒトの言う合理が理解されるかというと,それはほとんど無理なのではないかな?と思ったりしています.
まあその中で「噴火が近くなってくると海の中がうるさくってねえ~」という個体がいても不思議ではないのではないでしょうか?
御蔵島から引っ越してきたイルカたちについてはこちらをご覧ください.
シックスドーサルズホームページ「海棲哺乳類」のページ内 の「ミナミハンドウイルカ」をご覧ください.



写真:美しい甲殻類の幼生.冬の浜辺は様々な生き物が見つかります.

7日
ポッドキャストに波音を追加しました.
この日の夕方に海岸を散歩しながら録音しました.
寝る前に聴くと良い感じの音になりました.
波の音を何回もアップしていますが,いつも同じのようで結構違うので,これからも時々録音してアップしていくつもりです.
他にもいろいろと録りたい音があるのですが,思ったように録れずにいます.
気長にいろいろ録音していきます.
インタビューもまたそろそろやりたいなと思っています.

8日
ミサゴの捕食シーンの動画を作って YouTube にアップしました.
ミサゴはご存知のように海中にいる魚を捕るために空高くから,かなりの速度で海面に突入し魚を脚で捕まえる方法で捕食します.
そのダイビングは一瞬あの大きなミサゴの体が完全に水没するというもので,ミサゴが見えない瞬間にはミサゴの体積の分の水が水面に弾け飛びます.
その飛沫を見て遠くにいるミサゴに気づくという場合もあります.
ミサゴのダイビングの瞬間は最近ではテレビでも珍しくないようですし,ネット動画でも多数アップされていますから,私が撮った連写写真を繋げたコマ動画では物足りないかもしれませんが,見た事が無いという方がいらしたら,この機会に見て頂いて,それを手始めにネットで動画を探してみたりして,そしてミサゴに興味を持って頂けたらと願っております.
南房総ではミサゴのダビングは珍しいものではなりません.
ただ,少し距離のある沖で行われている場合が多いので,一般の方の目に留まりにくいだけなのです.
もし南房総に来られたら水平線に少しの間目を向けてみてください.
大きな飛沫が上がったらミサゴかもしれませんし,もしかしたらイルカのジャンプかもしれません.
そんな生き物と隣り合って暮らしているという事に気づくと海と陸を隔てている海岸線という線を越えて海に出てみたいと思うかもしれません.
そんな時こそカヤックがお勧めです.
自転車と同じくマンパワーで進むことで,海面が自分の世界になります.
まずはミサゴの動画を是非見てみてください!



写真:岩の上で魚を食べ続けていたミサゴ.

11日
2019/5/30に館山湾に漂着したオウギハクジラから得られた標本(寄生生物)を用いた 論文 の謝辞に屋号を記載していただきました.
現場ではあまりお役に立てなかったので申し訳ない気分ですが,とても嬉しいです!
これからも頑張ってストランディング調査のお手伝いしていきたいと思います.

そのオウギハクジラの写真はホームページのブログに1枚だけ載っています. 「2019年5月のカヤック日記」
当時はどのくらいまで情報を公開して良いか分からない状態でしたので,写真をコソッと載せるだけにしていました.
このオウギハクジラの漂着が発見されたのは,その日の早朝でしたが,その日私はカヤックツアーのご予約を頂いていて,朝から別の海岸に向かい,別の海岸で海に出てしまいました.
そして,ツアー中に電話が何度も鳴り始めました.
「なんだ?なんだ?」と着信だけ確認すると,国立科学博物館でストランディングの対応をしている田島さんからでした.
これはつまり「南房総のどこかにクジラかイルカが打ちあがったから急行せよ!」という(笑)連絡だとすぐに分かりましたが,私は目の前のお客様に対応しながらカヤックを漕いで安全管理をしている身です.
いくら希少種が打ちあがったとしても命を管理する以上の仕事はありませんから,申し訳ないなあと思いながら電話に出ることなくカヤックを漕いでガイドを行っていました.

私はツアー中は安全管理のために通常の通話は出ないことにしています.
これはかなり頑なで,とても偉い人(?)でもお客様でも関係なくガイド中は電話に出ません.
ひとりで漕いでいる時には出ますけれど,海面で長電話もどうかと思うので早めに終えて頂きます.
第一に電話に出られる海況と出られない海況がありますし,やはり電話に出るというのは注意力の低下になりますので危険です.
携帯電話で話していて事故を起こしたなんて間抜けで迷惑なカヤッカーにはなりたくありませんし,立場上あってはならない事です.
携帯電話がそれほど普及していない時代,海に出たら電話なんて掛けられるはずも無かった時代からカヤックを漕いでいますから,シーカヤッカーが電話に出ないからといって別に何も問題ないとも考えています.
携帯電話を持って海に出るのはあくまで緊急用で,緊急時に自分から電話を掛ける事はあり得ますが,かかってきた電話には出られないのが普通と思ってください.
「電話に出ない=海の上か...」とご理解いただければ幸いです.
上陸し手が空いてからすぐにかけなおし致します.
なので,すみません,私に電話を頂いても出られない場面が多々ありますので,お許しください!
そしてこの日の田島さん,ごめんなさい!



写真:夕焼けを背景に塒に向かうハヤブサ類.

ツアーが終わりお客様と海岸で分かれてすぐに田島さんに電話をしました.
なんとオウギハクジラが北条海岸に!という事と役所の方となかなかうまく話が繋がらないという内容でした.
なかなかややこしい状況でしたが,ぱっぱと片づけをして現場に急行しました.
科博が手配したトラックが既に到着し,クジラを回収するところでした.
昔ならクジラを追いかけて科博での解剖の手伝いもしていたかもしれませんが,最近はそれほど余裕がありません.
それに科博の別館が新宿の百人町にあった頃には比較的気軽に行けたのですが,筑波に移転してからは全く行かなくなってしまっていました.
完全な実費での活動でなかなかそちらの余裕がないという事もありますが,なんだか遠いのです.
行き慣れていない方角というのはなんだか足が向かないですね.
新宿のど真ん中に密かに大きなクジラが運び込まれ,夜な夜な解剖されている現場に立ち会わせていただいた経験は本当に貴重なものでしたが,もう随分前で既に懐かしい感じがしています.
今回はギリギリ間に合ったとも言えますが,出来たことは比較的鮮度の良い状態のオウギハクジラの体色を写真に残すことくらいでした.
そんな感じでしたので,実のところ今回はほとんど仕事をお手伝いできていない訳なのです.
それで論文に謝辞まで入れて頂き,大変恐縮した次第です.
この論文の著者にも田島さんが含まれていますから,それで当時の状況を思い返して謝辞を加えて頂いたのだと思います.
それにしても北条海岸でオウギハクジラを見る事になるなんて,今考えても驚きです.
千葉県はやっぱりスゴイです!



写真:砂にまみれて見つかった小さなイカ.
珍しいホオズキイカという種でした.

14日
海辺では海岸線にいる,いわゆる海鳥を主に観ているのですが,陸側も見てみればいろいろな鳥がいます.
写真はノスリ,ジョウビタキ,ハシボソガラス,モズ.
どれも南房総の海辺では普通に見られる鳥ですが,彼らにとって海岸近くの平坦地は餌場としてかなり重要な場所となっている様子です.
開発されやすい海岸沿いの平坦地を自然のままにできれば様々な野鳥が沢山見られる素晴らしい海岸となります.
防風松林一辺倒ではなく一般には荒地と言われるような広い海岸後背地を自然そのままに維持する必要があると思います.
ヒトにとっての生産性と野生生物にとっての生産性はかなり違うのです.

18日
今年に入って珍しい頭足類2種それぞれ1個体が見つかっています.
写真のとんがっている方がホウズキイカ,イカだかタコだか分からないような形の方がアミダコと観音崎自然博物館の山田和彦さんに同定して頂きました.
いずれも同館に研究資料として提供します.
頭足類にも興味が強まってきました!



写真:砂浜を理解する為に必要なのは本とネットだけではありません.
いろいろな意味で,砂浜を知るためにマウンテンバイクは最適です.

28日
自転車ツアー中にクジラの現場に遭遇.
海岸で寒い時期にユンボがいたら=クジラみたいな感じで大体アタリです.
夏やその前後は海岸をいろいろといじくる機会が多いですから重機が海岸にある事が多くなりますし,クジラが打ちあがる頻度もやや冬の方が多いと言えると思います.
今回もやっぱりそうでした.
しかし漂着したクジラを埋めるところではなくて,以前漂着して埋めたものを掘り返しているところでした.
当時見損ねた2016年に打ちあがったコククジラでした.
日本財団等の プロジェクト だそうです.
3Dで再現できるようにするとか?
あとは海洋大の方で骨格標本として保管されるようです.
私は一応海洋大で非常勤講師をしていた時期がありますが,全ての授業を館山の実習所で行っていた事もあり,東京のキャンパスにはほとんど行った事が無いですし,大学内で知っている先生もかなり限られています.
今回の件も全く知りませんでした.
以下は千葉県とコククジラ絡みでご参考にご紹介いたします.
「2005年に東京湾に出現したコククジラの観察」 と、その個体が岩井の沖で定置網に入って死んでしまったあとの写真が貼ってある 「カヤック日記(2005年5月)」です.
この2005年のコククジラに関しては東京湾の袖ケ浦の工業地帯に迷い込んだ時点での観察と岩井沖の定置網に入って死んだ後の剖検の手伝いもさせて頂き,いろいろと勉強になりました.
論文の方では袖ケ浦での記録について参加し,著者に加えて頂きました.
先のオウギハクジラの件でもそうですが,アジアのコククジラのような希少種がやって来る(悲劇的な終焉ではありますが)千葉県の海はやはりスゴイですね!



写真:ほんの少しの人工物の窪みで北風を避けて葉の青さを維持していたグンバイヒルガオ.
温暖化のような地球規模の気候の状態に加え,人の活動(主に作成物)の自然物への影響は局地的なレベル,さらにはこのようなセンチ単位の影響がその後の分布などに大きく影響を残す可能性が考えられます.

1月の南房総は他から比べたら随分と暖かいのですが,土地で育った人は寒い寒いと言います.
私は東京で育っていますので,同じ関東とは思えないくらい暖かいけどなあ~と思いつつ相槌を打っています.
寒くない事は無いのですが,寒いうちに入らないよね?という気がしています.
今これを書いているのは2月のもう半ばに近いですが,この冬は氷点下になった日が数日しかありませんでした.
館山湾に面した我が家でも霜がほとんど降りませんでした.
館山市街と千葉県南端の白浜町で比べても随分と暖かさが違い,白浜では昔から霜は降りないそうです.
館山市の南に面した太平洋岸の平砂浦(へいさうら)海岸でも多分同じかと思います.
太平洋に面しているか内湾の東京湾に面しているかで黒潮の影響の度合いが大きく変わりますし,南風を受けつつ,北風は受けない場所では特に気温は高めです.

南房総に移住する方が凄い勢いで増えていますが,移住先として同じ南房総市,館山市と定めても家の位置で全く気候が違うと言えるような差が出ますから,慌てずに数年くらいは南房総通いをして,時には車中泊やキャンプでもしてみて,その南房総の海と地形との関係を十分に理解してから家の場所を決められることをお勧めします.
あとはあまり海に近いと大変な苦労をしますから,昔から人が住んでいた場所とかけ離れていないかにも注意してみると良いと思います.
これについては以前kayak誌に書いたことがありますが,海から見えるところに生垣も立てずに立っている家はみんな移住者の家で,昔からの居住者の家は海から見えないのが普通です.
カヤックで海に浮かんで丘に見えている家を見てみれば一目瞭然です.
ただし商店や宿にしている家については見晴らしや目立つという必要がありますから,住居としての家とは立地条件が違います.
海辺の家を決める時にカヤックで沖から土地を眺めて観るという事で,風が当たりやすい,塩害の多い場所,少ない場所,日当たりといった住むための好条件が分かったりします.
つまりカヤックを漕ぐという事が安全のために,その土地と海を理解している必要があるという事です.
その知識がそのまま居住の安全と快適さの考慮に使えます.
不動産屋さんよりもカヤック屋に訊いた方が棲みやすい土地が見つかる?という事もあるのかもしれませんね.
何よりもご自身がカヤックを漕いでみるという事の方が大切なのは間違いありません.



写真:対岸に見える沖ノ島と館山湾.
居住地を「発見」するためにいろいろな場所の高台から眺めて観るのもお勧めです.

お知らせ


「kayak~海を旅する本」Vol.79 発売中
店頭希望小売価格=840円(税込み)
藤田連載の「カヤック乗りの海浜生物記」は61「ビーチクリーン」編です.
どうぞ宜しくお願い致します.
ご購入はこちら

6DORSALSのSNSリンク
随時活動報告,南房総の海の風景をお伝えしております.
是非フォローお願いいたします!

ポッドキャスト(インターネット音声配信)を始めました
運転をしながら,仕事で作業をしながら,音でブログを気楽に「読んで」頂けるようにポッドキャストでの配信を始めました.
文章では書ききれなかった事なども録音時に思い付きで加えてあります.
その他に波音などの海辺の環境音,海に関わる人のお話しなどもご紹介しております.
是非お気軽にお試しください.


パタゴニア